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第5話:みんなは今日何をした? 私はね、お掃除(6)

「ふむ。やはり身体再生機能は欲しい所だったな。せっかくの作品が台無しになってしまう」 


 そういいながらその人物が近づいてきた。


「塔……」


 探していた人物とこんな場所で顔を合わせてしまった。


「逃げ出してしまった作品の対処感謝するよ。まさか起動するとは思わなかったものでね」

「はぁ? 作品?」


 いつの間にか私の体から出てきていた愛歌が今まで見たことないほどの鋭い眼光で塔を睨んでいた。

 声もそんな声出せるんだってくらいドスが効いている。


「そうだ。美しいだろう? 究極の生物を作り出すことを目標に研究を進めているんだ」

「なぜ?」

「なぜ? 君は食欲が湧くことに理由を求めるのか?」

「そう。よーくわかったわ」


 愛歌は会話をしながら両の手それぞれで空中に小さく何かを書いた。

 汚い字だったけど多分、拳って書いたんだと思う。


「で? いつもは肉食獣に見つかった草食獣みたいにすぐ逃げてたって聞いたけど? 今日はなんでこんなところまで出てきてるわけ?」


 その光る文字を包み込むように握ると愛歌の両手が赤く光り始めた。


「君ら二人はもう二人と違ってそれほど厄介というわけでもない。疲れているみたいだし、あわよくば始末で切ればと思ってね」

「……そう。夜空?」

「なに?」

「あいつは私が殺ってもいいかな」

「えっと、はい。どうぞ」


 圧があまりにも凄くて、そう答えることしかできなかった。

 その瞬間、愛歌が塔の方に飛んでいく。そして塔をそのままタコ殴りにした。

 しかも。


「オラオラオラオラオラオラオラオラーーーっ!!」


 とか言ってる。

 えっと、怒ってるんですか? ふざけてるんですか?


「ちぃ!」


 塔は何とかそれから抜け出し、後ろにステップして下がった。

 見た目通り後衛タイプで、物理戦は苦手なのかもしれない。というか愛歌が肉弾戦を挑んできたこと自体予想外だったんだろう。


「まだまだいくよ。言霊魔術:伸縮っ!! のぉーーーっ!」


 そういいながら書いた魔術を右腕にしみこませ後ろに大きく振る。すると、ずっと後ろにまで腕が伸びた。


「え、まさか……」

「ピストルっ!!」


 その魔術によってゴムの様な伸縮力を得た右腕を利用して、拳を数m先の塔のみぞおちに拳を叩き込む。


「くっ、光属性魔術:硬化っ!!」


 塔が自分に強化魔術をかける。


「……。言霊魔術:SONIC」


 今度は筆記体英語でそう文字を書き、右腕に纏わせた。


「まあ、ジェネリックでしかないけど。あ、全部だった。流〇拳っ!」


 速すぎて何してるか上手く見えないけど、まあ予想はできる。見えないほどの動きで連続攻撃をしているのだろう。

 多少のダメージは通っているが硬化の魔術を突破しきれていないようだ。

 

「この程度が限界なら貴様は勝てんぞ」

「そ。じゃあ、そっちも攻撃してみてよ」


 愛歌さんは片手を腰に当てて立っている。


「いいだろう」


 塔が杖を振ると背後にいくつもの大きな岩が現れる。それが愛歌さんにとんでもない速度で撃ちだされた。

 普通の人間なら初弾で即死。私でも2、3回耐えるのが限度だと思う。しかし……。


「……それで?」


 愛歌さんには効かなかった。全ての岩が愛歌さんをすり抜けてしまったためだ。


「なっ……」

「基本的に私には大抵のものが物理干渉できないの。死んでるからね。でも身体はあるから、触れたいって思った物には触れられるの」


 ……うーん、チート。

次回も読みに来ていただけたら嬉しいです

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