第5話:みんなは今日何をした? 私はね、お掃除(1)
とある目的地への道中にて……。
「疑似超人について?」
私の問いに愛歌さんが問い返す。
「うん」
「それは多分、白かノアちゃんの方が詳しいんじゃないかな」
愛歌さんが返した。
それはそうだと思う……。
愛歌さんも私と同じで異世界へ渡るのは初めてらしいから。
それに対し、ノアちゃんは疑似超人そのものだし、白はそのマスターだしね?
「もちろん二人にも聞いたよ? でもノアちゃんは"何かなんて重要じゃない"って言われちゃって」
白は愛歌さんに丸投げしたし……。
「それに愛歌さんて物知りだし頭もいいから、わかりやすく教えてくれるかなって」
愛歌さんは若くして大学卒業してて、なんかすごい頭がよかった、らしい。
だってさ寿命で死ぬことがわかってたから、自分をAIに変えたとか言ってたんだよ?
そういう人ならわかりやすく教えてくれるんじゃないかと思ったんだ。
仕方ない、といって話を始める。
「一言で表すなら、……改造人間? それか殺戮兵器」
「どっちにしても穏やかな響きじゃないね……」
「まあね。いわゆる異世界は無数にある、っていう話は白から聞いてるでしょ?」
「うん」
異世界、っていうと実は語弊がある。
そもそも宇宙がいくつも存在していてそれぞれの中に一つだけ、全ての宇宙の全く同じ座標に位置する星がある。
それらは同じ"人"という生物が生息していることで繋がりを持っている。それが異世界、正確には多重星界。多にして個の世界群。地球もその1つに属している。と説明された。
ちょっと頭がどうかしそうだったけど、なんとか頭の中で噛み砕き、次の説明を聞く。
「それらとはほんの少しだけ違う法則で独立して存在している世界があるんだけど。えと、通称"魔界"と呼ばれる世界ね」
「おお、それはまた中二病なネーミングの場所ですね」
「そうね。私も見たことも行ったこともないし、どんな所かはわからないけどね」
愛歌さんによるとその魔界に住む知的生命体の一つに、"死神"がいるらしい。
「そもそも少数種族らしいんだけど、その中にも派閥があって争いを続けていたらしいのね」
しかしその最中個体数が減ってきてしまった。
そこで自分たちを殺しあわない策として、魔界外から人を捕まえてきて改造して争わせるようになった。
より強い兵士を作り出せば、それだけ死神の中で発言力を得ることになる。
研究と実験を重ねた結果、人の中に稀に生まれる"超人"、あなたたちのことね、それを模した改造人間、"疑似超人"を作り出した。
「……それってさ? 人間を攫ってたって事だよね?」
「そうね。神隠しと呼ばれる現象はこれが原因だったかもしれない」
「……ノアちゃんも……、その一人なんだよね?」
「そう。でも幸か不幸か、数百年の以外の記憶はないって言ってたから、連れ去られた時の記憶も無いんだと思う」
「……そっか」
気分の悪くなる話だと思った。
第5話は、夜空と愛歌のペアを中心に動いていきます。
よろしくお願いいたします。




