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第4話:夢見るパンドラ(14)

 完全に周囲が紅く染まって夕暮れといえる時間になったとき、またサニが口を開いた。


「そりゃ私だって! 残りの人生、悔いのないように生きたかったですよっ!!」


 海岸に叫びが吸い込まれていく。


「でも、私がいると、関わった人が不幸になっちゃうから……」


 寂しげにぽつりと呟いた。


「それはあなたの言葉? それともお父さんの言葉?」

「……わかりません。でもみんなみんな、私のせいで不幸になってく……っ! 今回だって夜空さんが事件に巻き込まれて、あんな風に……っ!」


 そういうと蹲って泣き始めてしまった。

 愛歌はサニを抱き寄せしずかに落ち着くのを待っていた。


「……本当にいいんでしょうか。意味なんてなくて……」


 そして数分経って、また小さな声でそう言った。


「どういう意味?」


 愛歌も静かに返す。


「夜空さんが言ったんです。生きたいと思うことに……、何かをしたいと思うことに意味を求めなくていいって」

(夜空がそんなことをね……)

「ずっと思ってたのかもしれません。誰かを不幸にしてしまう私が何かをしたいと願うなら、それなりの理由がいるんじゃないかって」


 サニは夜空の言葉でそれに気づいたのかもしれない。


「そうね。夜空の言葉は一つの正解かもしれないわね」


 愛歌が口を開く。


「あの子は考えるよりも先に行動するタイプだし、そういう人にとって意味は後から付いてくるものだから。それはあの子の美点であり欠点ね」


 気づくと周囲はいつしか薄暗くなり始めていた。


「きっとあなたはそうじゃない。何かしたいと思った時に未来を不安に思い、悩んでしまうのね。同時に過去を思い出してしまって、自分を責めてしまう」

「……そうかもしれません」

「なら一杯悩んでみて、考えてみていいの。今自分のしたいことは? どんな風に生きたいの? って。その方があなたらしいのかもしれないから。でも考えちゃいけないことが二つある」

「なんですか?」

「まず遠い未来や過去について考えちゃダメ。それは十分にあなたに足りているから。今に明日に近い未来にだけ目を向けてみて」


 サニにとってそれは難しいことかもしれない。

 でも短い生を抱えた者には必要なことでもある。


「そして、これは夜空の言葉被るけど……。うん。めいっぱい考えてだした答えに理由を探しちゃダメ。そこはそう思ったから、やりたいと思ったから。それでいいと思うわ」

「……」

「とまあ、これが私の出した答え。あとは好きな方を取ったらいいわ。冷える前に部屋に戻ってね」


 そう言って愛歌がベンチから立ち歩き始めた。


「あ、そうだ。忘れるとこだった。一つ提案があるの」


 2、3歩歩いた時愛歌がすれ違ってサニにこういった。


「なんです?」

「私にあなたの体の干渉権を貸してみない?」

明日も読みに来ていただけたら嬉しいです

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