ルシフィエス(1)
―――正義の弾丸軍要塞・紅花夜空
グリンを倒しその崩れかかっている要塞の中を彷徨っていた。
戦闘による疲労感を感じながらも、重くなった足を引きずってゆく。
「白!」
その先で白の姿を見つけ、駆けよる。
「夜空?!」
白は驚いた顔をしてこっちを見てきた。
「お前が捕まったって言うから救出に来たのに、なんで自由になってるんだよ」
「えーっと」
私は事のいきさつを話した。そして……
「ユニヴァース・リミックス?」
「知ってるの?」
「ああ、でもかなり高度で難しい術のはずだ。それこそ魔界の生物だって安定させて使うのが難しいくらい」
「それの完成のために私が必要だとかで」
「……なるほど。確かに夜空の能力なら……」
白がぶつぶつ言っていた。
「でもそれ爆発してなくなっちゃったよ。私が何とか抑えたんだけど」
「それで今こうなってるのか……?」
音を立てて崩れかかっている要塞を指して白が言った。
「いや、それはまた別」
私がユニヴァース・リミックスを抑えた後にはまだ要塞は普通に立ってた。確かに一回大きく揺れたから、崩れる原因の一端にはなってると思うけど、他の原因がまだありそうな気がするな……。
「まあいい。でグリンを倒したんだな?」
「うん」
しっかり消滅したのを確認したから、復活もしてこないはずだ。
「ならいい。俺もライグを倒した。夜空も俺もかなり消耗してる。一旦引こう」
「そうだね」
これ以上ヤバい奴と出くわしてたまるかっての。
「その前に今、ノアを探そう。どこかに……」
ダンッ……。
そんな話をしていた時近くに何かが降ってきた。瓦礫とはまた違う何かだった。
「ノア!」
そう、それはノアちゃんだった。かなり傷ついているように見える。
地面に激突し、すぐに立ちあがって上を見た。
私たちも目で追う。
「ほう。お前たちがこ無事で集まっているということは、そうか、ライグとグリンも逝ったか」
その先から背に翼を携えた金髪のイケメンが降りてきた。
「あんたは……」
この世界に来た頃……、大樹の巫女祭のための依頼で森で出会った。よく覚えている。
「私の名はルシフィエス。見ての通り、天界出身の天使族だ。今は正義の弾丸軍の顧問の様な立場にある」
翼を使いゆっくりと下降し着地した。
「なるほど。てめぇが戦闘行為を行うために、あの契約の石が邪魔だったんだな」
「そう言う事だ」
あのどれか一つでも石を奪われていなければ……、こいつは戦闘行為ができなかったはずなんだ……。
やはり悔やまれるな……。
などと考えていたら、そいつと目が合った。
「あの時言った通りお前たちは私の駒を全て倒した。正確には私のものではないがな。私もお前たちと戦ってやろう」
そういえばそんなこと言っていたな……。
「さて、賞賛もかねて、そうだな。私からは一切貴様らには触れずにいてやろう。それくらいのサービスはくれてやる」
「はあ? 舐めてんのか?」
「もちろんだ。それくらいのハンデがあった方が楽しめるだろ?」
そういうと突如ルシフィエスが目の前に現れる。
「何せ本気を出せば、一瞬で落とせるのだからな……」
次の瞬間、腹部に激痛が走った。
そして私の意識は一瞬にして暗闇に沈んだ。




