ワタシノセカイ・後編
「なんだここは……」
グリンが珍しく顔に焦りの色を浮かべながらその道を走る。
森の中に作られた石畳の道。灯籠が等間隔で両脇に並んでいる。湾曲しながらも平たんに、曲がりくねりながらもまっすぐに。
「いつまで続くんですか。この道は」
そしてはしれば走るほど。
「ぐふっ!」
前方から何かが体に何かが刺さっては消えていく。
しかしなぜか走り続けなくてはという衝動に駆られ体を動かし続ける。
「何の音だ!」
次第にグリンの耳元で何人もの子供の笑い声が聞こえ始める。
それと同時に足元に小さな光の生命体が数体現れ、動くグリンを囲むように円を描きまわり始めた。
「目障りです! っ?!」
その一体を攻撃すると当たる瞬間にその左手が、もとから何かブロックの様なもので積み上げられて作られたものだったかのようにばらばらと崩れ始める。
脚で攻撃しようと、魔術で攻撃しようと、そのたびにグリンの体が崩れていく。
「なぜ……、なぜ再生が始まらないのです!」
気づけば何もできぬまま、石畳の上に這いつくばっていた。
―――大丈夫。まだあんたは壊れてない。
その耳元に夜空の声で話しかけられる。
―――ただあなたの精神がだんだんと壊れていっているだけ
「なにを……」
瞬間、グリンは強い落下感を感じる。
何もない空間を強い重力でどこへとも知らない場所に引っ張られているような感覚だった。
……そして。
「ぐはぁ?!」
そのまま、何かに胸部を貫かれた。
そして地面に投げ出される。それをやったのは夜空だった。
「しぶといな。だいぶ精神を攻撃したと思うんだけど」
この世界の中であれば精神を物理攻撃できる。
それでかなりダメージを与えたはずなんだけどまだ生きてるよ、こいつ。
「いいよ。次の一発であの世に送ってあげる」
「なんだと……」
この世界はもうそろそろ時間切れだ。
実際、これで殺せなかったのなら、その時は途端に私の勝ち筋が薄くなる。
「呼見送離」
静かに唱え、もう一度背景に溶け込む。
そして。
「はぁッッ!!」
「!?」
カーン!
夜空の刀がグリンの鎌に防がれた音が周囲に響き渡る。と同時に狂怖世界が限界に達し消えた。
冷えた風が2人の間に入り込む。
グリンが困惑し、後ろを振り返る。
「今……、何をしたのです……」
夜空が攻撃してきたのをみた。それを完璧に防いだのも観た。その音も聞いた。
だというのに、ただ一つ。その"感覚"だけが無かった。
「何をした……、と聞いているのです!」
攻撃を防がれ、自身の作り出した世界も消えた。それなのに夜空はどこか涼しい顔をしてそこに立っていた。
そして。
「がは……っ!」
突如グリンの体が真っ二つに裂かれる。
「一体……、どうやって」
最後にそれだけを言い残し、グリンは消えていった。
「セオリさん。仇は取ったよ」
夜空が切り離し先送りにした、映像と音。それにやっと夜空本人が追い付いたのだった。




