白 VS ライグ(1)
ライグ。こいつ、やっぱすごいな。
年を取っちゃあいるが、その分魔法の工夫が半端ない。
さらに。
「っ!」
ぐぅーん、と急加速して動き、魔術を多数生成してこちらに飛ばしてくる。
俺たちと会っていなかった2年以上の間。止めることしかできなかった時間をある程度まで操作可能になったらしい。
自身の時間速度を上げる魔法と、自分以外の世界の時間の流れを速度を遅らせる魔法。
その2つを的確に使い分けてくる。
自身の方が速く動けるという結果は同じだが、2つは似て非なる魔法だ。
自身の時間の速度を上げる方は、自身の思考速度は変えられない。故に、先に時間速度を上げている間に何をするのかを決めておかなくてはいけない。しかし消費魔力は少なくて済む。
逆に周囲の時間速度を遅くした場合は、自身の思考速度までは変わらない。故に自身に不利な攻撃が飛んできた時には、それを全て一瞬で把握され避けられてしまう。ただし使用魔力量は
「ちぃ」
剣四本、さらには極細の縫い針を8本、その上で俺の近接攻撃。
それを同時に放つが避けられる。
こんな風にどんな攻撃をしてみても全て避けられてしまう。
自分の方はできる限り避け続けるが、着弾するものは全て水闘気力で消していく。
「はぁ……。はぁ……」
「どうした白殿。息が上がっておりますぞ。あの時は余裕そうでしたのにな」
「……ちぃ。二年でよくここまで腕上げたな……」
しかしライグの言う通り、今はマジで余裕ない。
いたずらに魔力と体力を消費し続けてる。このままだとジリ貧だ。
「はぁ……。愛歌の制御で黒を使ったら、多分怒られるんだろうな」
「黒? ! なんだそれは」
「あ? 前会った時は俺や夜空の魂源を知っていたようだったが、こっちは知らなかったか」
肩のあたりから腕に這うように、無数の触手を闘気力を編んで召喚する。
「こっち……? 魂源は一人につき2言1組までのはず。それが組み合わさって魂の形を成し、根源となるのだ」
「ああ、基本はな。けど例外はあんだろ!」
その触手に水闘気力を流し込む。俺はその場から動かないまま触手を超スピードで操り、ライグを殴り飛ばした。
一瞬時間操作をつかった気配があったが、それで遅くなるよりも早く攻撃すれば。
「ぐはっ!」
「やっぱ当たるじゃん」
血を吐きながら吹き飛んで行くライグを見ながらつぶやいた。
ドクン!
突如心臓が悲鳴を上げるように鼓動を打った。同時に様々な悲鳴や怒号、怨念を詰め合わせたようなそんな幻聴が脳内を駆け巡った。
「はぁ……。はぁ……。くっ。久々の反動は効くな……。愛歌の制御無しはやっぱきついな……」
心臓が速く動いていくのを全身五感で感じながら呟いた。
黒闘気力を使った代償。使えば使うだけ精神が汚染されていく。愛歌がいればある程度保護をしてもらえる。しかし自分だけだと、その影響をもろに受けてしまう。
「全くなんで自分の能力なのに代償がこんなに必要なんだ……」
なんて文句言ってたって仕方ないんだよな……。
「ほら、まだまだ行くぞ。お前の精神、どこまでもつかな?」
そうライグと俺自身にどうじに語り掛けた。




