死走曲
―――正義の弾丸軍要塞・ノア
「な、なんで……」
トリカがそれまでの遷都によって蓄積されたダメージ、それを使った”復讐”による渾身の一撃。
それをノアは涼しい顔で耐えきってしまった。
それまでのどんなトリカの攻撃もノアには届かない。その絶望に今までの余裕な笑みが完全に消え失せてしまった。
「はあああああああ!」
やけくそになったのか、トリカが走っていき鉈ををノアに振り下ろす。それを素手で受け止められ、握力で鉈を粉々に砕かれてしまった。
「……ぅそ……」
「そろそろ、終わりにするよ」
静かに告げたノアが全体重を乗せ、トリカのみぞおちに拳を叩き込む。
吹き飛んで行ったトリカ。その先に追いつき頭を踏みつける
そしてその勢いで上に上がった足を掴み、鞭のように振り回し地面に打ち付ける。
数度繰り返した後、トリカの上体を蹴り上げ、足首から頭に持ち変える。近くの壁にそれを叩きつけそのまま壁沿いに投げ飛ばした。
またもその先に追いつき、再度拳をその体に叩き込んだ。
「……」
少し離れ残心を取り様子を伺う。トリカは壁から地面に倒れていた。
「なん……、で……。なんで、届かない……、の……」
血だるまになり地面を這うトリカがノアに手を伸ばす。
「さあ……。私のこれは望んで手に入れた力じゃないから」
「あんたに勝つために、わた、しは……」
「……そう……」
ノアは無表情のまま、倒れているトリカに近づき手をかざす。
「さようなら。私の"妹"。死走曲」
静かに言う。トリカの頭には心地のいい歌声が聞こえ始める。
次第に体がポカポカとしていく。
「……私は……」
そして、幼い頃。母親の腕に抱かれていたころを思い出し……、その瞬間に静かにことが切れた。
トリカが死んだことを確認し、ノアはその技を終わらせた。
「白の所に行かないと」
「そうか、トリカが死んだか。残念だ」
「!?」
ノアが声をたどり上を向くと、吹き抜けになっていた上階から翼を携えた男が降りてきているのが見えた。
「しかし約束だ。私の部下を倒したお前には私と戦う権利をやろう」
「…………」
一転、ノアは冷汗をかいていた。
(こいつは、強い……)
まだ力を見せていないが、ノアは本能的にそれを察知する。
しかし逃げられそうにもない。そう判断し剣を取り出した。




