橋の上の戦い・中編(1)
―――橋の上・ナミネ
ナミネの体は血みどろになっていた。身に着けていた着物はズタズタになっており、足元には自身をここまで引き裂いた刃物がいくつも落ちていた。
回復魔法と強化魔術でまだ保っているが、いつ致命傷となるかわからない。その上、その空気中に仕掛けられた武器全ての場所を把握したゲートがその場を動き回って攻撃し、刃物が設置してある場所まで的確に誘導してくるのだ。
さらに奴らが引き連れた魔獣が自身を食らおうと襲い掛かってくる。それも倒しつつ応戦しなくてはいけない。
身体的にも精神的にも追い詰められていた。
「はぁ……。本当に、もう……」
「どうした? もう降参するか?」
弱音を吐きそうになっているその様子を見て、ゲートがそう言う。
「そうですね。私自身、白様の、そしてシンノミヤのためであればこの身を捧げることも厭わないつもりではあります。しかし、それは今ではない」
ここで死んでは何も償えないまま終わってしまう。
「ですから、あまりやりたくはなかったですが……」
自身ながれるジンマの血。それに起因する醜い一面をまた掘り出すことになってしまうから。
しかし負けるよりはましだろう。
「魂界花:絵描世界っ!!」
闘気力によって虚数空間にその世界を解放する。
そしてゲートをその世界に引き込んだ。
「っ?! な、なんだ、ここは!?」
「魂界花も知らないとは。これでは相手になりそうにはありませんわね」
ここはナミネが明描きたい物を思うだけで、それを描き出せる世界。
普段であれば作り出してすぐ魂の中に封印することで、運用効率をあげているのだが、今はそれでは意味がない。
「ここであれば私も存分に力を振るえます。あの煩わしい魔獣や空中の刃に惑わされずに済みますしね」
そのために虚数空間に連れ込めたのだ。
「くっ、すでにそんなボロボロのくせによく虚勢を張れる……」
そういいながらも、ゲートは自分が形勢逆転されたことに気が付く。
「さて、あなた様の腸と体液、存分にぶちまけてくださいまし」
そういい、いつもの雅な様子からは想像がつかないほど、邪悪な笑みを浮かべた。
突如手の中に銃を出し、それをゲートの腹に撃ち込んだ。それにうろたえたゲートの背後から二つの剣が降り注ぐ。
「っつ!!?」
避けようと反応するのだが足を貫いた。
倒れるゲートが地面に倒れる前に、膝立ちの状態で固定される。その場所にナミネがギロチンを作り出したのだ。
「死になさい」
そのままゲートは首を斬り落とされ、命を落とす。
「ふん。あっけなかったですわね。せっかく本気を出してあげたというのにこれですか」
そう開花させた世界を魂にしまいこみながら文句を言った。




