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それぞれの戦いの始まり

―――正義の弾丸軍の要塞・紅花夜空


 迷宮のように入り組んでいるその場所の中を歩いていく。


「まったく。ホグワーツくらいでかいんじゃないの」


 まああれがどれくらいでかいのかしらないけど。

 とにかく早く白たちと合流しないとさ。


「キッヒッヒッヒ。そうですか。あなたが来ましたか」


 ほら……、ああいうやばいのと出くわしちゃう羽目になっちゃうからさ……。


「グリン……」


 はあ……、まさか、中でも最も厄介なやつと出くわしちゃうなんて……。

 本当についてないな……。


「あなたが来ましたかってなに? 待ち伏せしていたんじゃないの?」

「それは半分正解と言えますねぇ。あなたのお仲間方が攻め入ってきていると聞いて、本日この要塞の中には魔法をかけていましてね……」


 グリンはその魔法について話始める。


 * * *


―――正義の弾丸軍の要塞・ノア


「きゃっはは! ランダムだったはずなんだけど! 本当にあなたが引けるなんて、ラッキー」


 耳にキンキンと響く甲高い声が聞こえ、ノアはため息をつく。トリカだ。

 この場所に入り込んで数分後、だんだんと白の声が遠くなるのを感じていた。何か幻術の類を掛けられているなとはわかったが、その時には遅かった。

 気づけば白とはぐれていた。とはいえそこで止まっているわけにもいかずその中を歩いていたら、トリカと出くわした、というわけだ。


「早くあんたとさ! つけたかったんだよ! 決着を!」


 トリカはそう狂気的な笑みを浮かべたかと思うと、鉈を振り回しノアを攻撃した。ノアは最低限の動きでそれを避ける。

 その後もトリカは驚異的なスピードとパワーでノアを攻撃するが、すべてギリギリのところで躱していく。


「ほらほらどうしたの! 本気でやってくれないとさ! つまらないんだよね!!」

()()で? そうわかった。いいよ」


 ぶわ……。

 瞬間、ノアを中心に風が吹き荒れた。ノアの魂源:"壊滅"による銀色の闘気力(オーラ)がノアを包んでいる。


『もし何かあったら、今日は()()を出していいぞ』


 そう白から許可されていた。

 あまりに強力であるがために、普段は抑えろと言われているノアの最大開放モード。


「うっはー、面白そうじゃん!」


 この時のトリカは知らなかったからこそ、こうして楽しそうにできていた。

 かつて白をも苦戦させ、仲間になってからも基本使うなと言わせた。その理不尽なまでのノアの強さを。

 今トリカは身をもって知ることになる。


 * * *


―――正義の弾丸軍の要塞・青水白


「つまり、入ってきた人間をランダムにあんたらのところに振り分ける幻術、もしくは魔法をかけていたってところか?」


 目の前に出てきたライグに訊いた。


「ふむ。流石に察しがいい」

「はぁ……。なるほど。だからこの要塞の中の警備はこんなに薄かったのか」


 じゃあむしろ、橋で後ろからきた奴らは無視して全員で攻め込んじゃってもよかったかもな。

 まあ後悔しててもしかたないか。


「んじゃ、さっさと倒して先を急がせてもらうかね」

「そうやすやすとやられるつもりはない」

「あっそ」


 まあ、厄介な相手であることには変わりないな。


 * * *


―――正義の弾丸軍の要塞・紅花夜空


 なるほど、幻術で全員をランダムに振り分けてね……。

 じゃあ、ノアちゃんがグリンとが当たらなかったってことは、こっちにとっても少しはラッキーだったかもしれないな。

 それに。


「ちょうどよかった」

「ん?」

「私もさ。あんたと戦い(やり)たかったんだよ。本気でやれるとこでさ」


 そう言って刀を抜いた。


「師匠の仇は取らせてもらうから」

「ふふ。楽しみにしていますよ」


 そういいながらグリンも大鎌を手にしていた。

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