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橋の上の戦い・前編(2)

―――橋の上・言葉しずく


 ドン!

 しずくが魔獣を攻撃していると、突如近くの空間が爆発を引き越した。

 ダメージはそこまでなかったが体が吹き飛び橋の縁に背中を打った。


「な、なんでござるか……?」


 倒れる前に体勢を立て直し、周囲を見渡す。


「ガッギャッギャッギャ! 派手に吹き飛びおったわ!」


 深緑の肌をした男性がそこにいた。


「ワレの名はエジェ。正義の弾丸軍の」

「ふっ!」


 余裕を見せている隙にとそいつに急接近し、刀を振った。

 ボン!!

 刀がその首筋に触れた途端、そこを起点に先ほどよりも強い爆発が起こった。急ぎ魂源"洗浄"で威力を相殺しようとするが、体表面に軽い火傷を負ってしまった。


「くっ……」


 道着の上衣に火が燃え移ってしまっていることに気が付く。


「仕方ない……」


 こうなっては邪魔だと判断したしずくは上衣を脱ぎ捨てた。


「今のはあの者の闘気力というやつでござるか?」

「正解だ! ワレは常に闘気力を纏っている。それに触れたものは爆発するというわけだ!」

「……。なるほど」


 しずくは基本的に物理攻撃しか持たない。魔力をほとんど持たない故に、攻撃魔術という選択肢はないし、闘気力も"放つ"という使い方はまだできない。

 つまり。


「拙者の天敵ってことでござるな」


 だというのにしずくの口角は上がっていた。


「だからこそ面白いでござる!」


 しずくとエジェによる戦いが始まった。


 * * *


ーーー橋の上・ナミネ


「なんなんですか! あの者は!」


 ゲートと名乗ったそいつが現れたその瞬間から、幾ら”絵”を生み出しても動かなくなりすぐに霧散するようになった。


「僕の目に映ったものは全て空中に固定化されるのさ。生物は無理なんだけど」

「!」


 少し後ずさったナミネの肩を、突如何かが貫く。まるで後ろから刺されたようだった。その場所から突如ナイフのようなものが現れ地面に落ちた。


「そんな風に無生物なら空中に固定化できるのさ。そして自分の気力を流したものなら透明化できる。そしてあんたの召喚する(描く)奴らは生きてはいないだろ?」

「そういうことですか……」


 一体周囲に幾つの武器がある? どこにある? 常に気になってしまう。厄介な敵だ。とナミネは心の中で舌打ちした。


 * * *


ーーー橋の上・ルト


「はぁ……、はぁ……」

「そんなところで隠れてないでさ! さっさと出てきてよ! で、さっさと僕に殺されてくれないかなぁ!」


 ルトは魔獣の死骸を積み上げ、盾にしてサイトと名乗るそいつから隠れていた。

 身体中から血を流している。サイトが手にしていた銃からの攻撃でできた傷だ。


「不利ですねこちらが」


 サイトの魔眼。まるで赤外線カメラのような視界で世界を見ることができるらしい。

 ルトの能力は、何もないところでも敵に気づかれないほどに気配を消すことができる能力。キロフに狙われた時からもう一度修行して、以前のレベルにまで戻した。だというのにこの相手ではその能力も全く意味をなさない。

 その上武器も相手は銃で、こちらはダガー。

 途中でナミネとは離れてしまった。すぐの救援は期待できない。


「まずいですね」


 ルトは暗闇の世界で一人、打開策を探し思案する。


 

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