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第4話:夢見るパンドラ(8)

「の、ノアちゃん、どうやってここに……?」


 頑丈な扉を破壊して入ってきたノアちゃんにそう聞いた。


「どうって、正面突破」

「な、殴りこんできたの? ってそんなことじゃなくて、どうやって? 見つからなかったの?」

「敵を全員殺せば、見つかっていないのと一緒」

「はい?」


 何言ってんのこの脳筋美幼女。


「もういいでしょ。さっさとここからでるよ」

「い、いや、なんでか、力が上手く使えないんだよね。多分この腕輪のせいだと思うんだけど」

「ん。ああ、死神の枷」

「死神の枷?」

「装着した者の生きることに必要最低限なこと以外のあらゆる力を封じ込める」


 ノアちゃんが見事な手捌きで私たち二人の腕輪を斬り落とす。

 力は戻ってきた。しかし枷をつけられたことで失われた魔力がすぐに元に戻るわけではないようだ。


「ほら、行くよ」

「うん」


 立ち上がって出ていこうとする。

 しかし、サニちゃんが着いてきていないことに気づいた。


「サニちゃん? どうしたの?」

「言いましたよね。私は死にたいんです。逃げるならご勝手にどうぞ」

「まだそんなこと言って……」


 私が話しかけようとしたとき、ノアちゃんが割って入ってくる。

 そしてサニちゃんの首根っこを掴んだ。


「は、な、何?!」

「さっさと立って。あなたや夜空を守れなければ、私が白に怒られる。あなたの我儘に付き合っている時間はない」


 ノアちゃんはいつもの表情を変えないまま顔をサニちゃんに寄せ、冷たく言い放つ。


「……は、はぁ?! 我儘っ?!」

「そうでしょ? 自分は不当な扱いを受けてきた。理不尽な目に合ってきた。そう喚いているだけの子ども」

「……何が我儘。私の気持ちなんて何も知らないくせにっ! 大好きな人も物も! 幸福も夢も! 何もかもを失う辛さなんて、貴方にはわからないでしょっ?!」


 サニちゃんの叫びが静かな廊下に響き渡る。


「……」


 少し経って手を放したノアちゃんが口を開く。


「……夢は、あるんだ」

「ぇ?」

「そうやって怒ることもできる。それはまだあなたが、あなたを失っていない、ということ。何も失いたくないって言うくせに、それは失ってもいいの?」

「……」


 そんな話をしている間も、ノアちゃんは眉一つ動かさなかった。


「どうでもいいけど、別に私はあなたを救いたいんじゃない。自分のためにあなたを助けたいだけ」

「……」

「わかったら、さっさと立つ」

「……わかりました」


 サニちゃんが補足具を起動する。


「それで、どっちが出口?」

「あっち。二人で行って」

「え? ノアちゃんは?」

「白の命令で犯人を捕まえる。相手が疑似超人なら殺すことも視野」


 なるほど。


「わかった」


 私たちは牢から逃げ出し、出口を目指した。

明日も読みに来ていただけたら幸いです。

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