きっと私はこれからも
結局、契約の石は取られてしまった。つまるところ今回の事件では、またも私たちは正義の弾丸軍にいいようにやられて終わってしまったわけで。
まあそれをいうのなら、きっとジンマ教団の方も同じだと思う。
大神官が殺されることをあいつらは全力で止めることをしなかった。なぜならその方が、他のジンマ教団を使いやすいからだ。そして実際に彼らの作戦のおとりのために使われてしまった。きっともう、大した人数は残ってはいないだろう。
街中に作られた結界の外の被害は白たちの活躍もあって、ほとんど出なかった。問題は中の方だ。
結界内ではしずくちゃんと私ができうる限り最速で対処をしたものの、それでもあまりの教団員の多さにかなりの被害を出してしまった。
祭りに参加していた人のものか、それともジンマ教団のものか、それもわからないほどに祭りの中心部は血で染め上げられた。そのことから今回の一連の事件は「赤い祭事変」と呼ばれることとなった。
被害人数だけで見ればフラウロウの事件の時よりはかなり抑えることができた。しかしこの国にはもう一つの大きな損失がのしかかっている。この国始まって以来ずっと神子天皇として君臨していたセオリが死んだ。このことは瞬く間にこの国全ての人の心に影を落とした。セキヤミさんを含めた中枢の人間たちはとても忙しそうにしていた。
魔霧は晴れた。ジンマ教団はほぼ壊滅に追い込めた。だというのに未来には暗雲が立ち込めている。
「それでもきっと、一年もたてば、また人々は普通に生活を営んでいるのだと思いますよ」
私がそんなことを言っていたらナミネちゃんがそういった。
ああ、そういえば、なんだかわからないんだけど、ナミネちゃんはなぜか修行に行く前よりもあまり私を邪険に扱わなくなって。こうして話もしてくれるようになった。
「そんなものかなぁ」
「ええ、きっと」
まあ、案外人間そんなものなのかもしれない。
セオリさんの刀、「神無」を眺めながら思った。
刃渡りはなんと170cm近い。きっと身長2m10cm前後とかのセオリさんの体躯に合わせて作られたためだろう。
……物理的にも、精神的にも重いこの刀。私に使いこなすことができるだろうか。
"もう二度と同じ思いをしないために、私は戦い続けないと"
きっと私はこれからも失敗をして、失って、同じことを言い続けるかもしれない。
それでも……、セオリさんの死に報いるためにも……、不安しかないけどやはり、これからも進んでいかなければ。




