第4話:夢見るパンドラ(7)
「ダメだ、びくともしない……。鍵穴の一つでもあればどうにでもできたのに……」
あの後目が覚めると小さな部屋にサニちゃんと、腕輪を嵌められて閉じ込められていた。何故か魔法の類が使えず、全身が全力で筋トレやった後みたいな脱力感に常時襲われていた。
もう捕まってから何時間立ったのかもわからない。何の目的で捕まったのかもわからない。不安で押しつぶされそうだ。
「どうしたら……」
いやいや、私がこんなんじゃだめだ。
「大丈夫だからね。絶対ここから出してあげるから、大丈夫」
笑顔を作ってそういった
サニちゃんの方が心配なはずなんだ。私がこんなんでどうする。
私は超人で冒険者だろ。
そう気合を入れた。
「大丈夫だから……」
さて、どうやってここから抜け出したものかな。
「はぁ……」
そんな風に悩んでいた時、大きなため息が聞こえた。
「大丈夫とか、自分勝手言わないでもらえますか?」
そして冷たく言われてしまった。
「え?」
「そうやっていって、自分を落ち着かせようとしているだけでしょう? 別に私は"大丈夫"ですから。ここで死んだっていいんです」
……。
嘘だ。
「そんなわけないでしょ」
「は?」
「本当に死にたいって思ってる人は、あんな顔しないよ」
「……」
ノアちゃんに殺されかけたあの時の顔。あれはまだ命が惜しい、そう思っている人間の顔だった。
……私にはそう感じた。
壁にもたれかかって座る。
しばらく静かな空気が流れていた。
「……私もね。昔本気で死のうと思った時期があったんだ」
暴れても意味ないなら、と話を始めた。
サニちゃんは何も言わずに宙を見つめていた。
「大事にしてたものを失ったりとか、信じてたものに裏切られたりとか、いろんな悪いことが重なった時期で……、なんかもう嫌になっちゃって。高いとこに登って、あと一歩ってとこまでいったことがあるんだ」
そんなこと話したって無駄かもしれない。でも、この子が元気になる何かのきっかけになれば……。
「だからね。私はあの時死んだの」
「……はぁ?」
「あーえと、そうじゃなくて、死んだことにしようと思ったの。今まで持ってたもの全部捨てて新しい人生を生きて見ようと思ったんだ。死のうと思った時には想像もできなかった楽しいことが沢山あったよ。だからさ、死にたいなんて」
「どっちにしたってっ!! ……私は死ぬんです。その事は何も変わらないじゃないですかっっ!!」
「全然違うよ! 最期の時に笑える思い出があるか、今みたいな顔をしたままなのか。それは全然違う事だよ!」
「それが何になるんですか? 幸せとか、楽しい時間とか、そんなの手に入れたって、結局失うのが怖くなるだけじゃないですか!」
「そうじゃなくて!」
ドォーン。
「はぁ。騒がしい。外まで声が聞こえてる」
突如、そんな声と共に部屋の扉が爆散する。そこには軽々と片手でドアを持ちあげ、近くの壁に立てかけているノアちゃんがいた。
明日もよろしくお願いします。




