赤い祭事変(3)
―――青水白
恐獣の足を斬り落とし上空へ跳び、下降しながら首を斬り殺す。
「はぁ……、はぁ……」
くっそ……。
「もう、どれだけ経った?」
一時間、とまではいかずともかなりの時間が経過したはずだ。おかげで恐獣はほとんど狩りつくすことができたが、結界は未だ破れていない。
被害は? しずくは無事か? 結局何が目的なんだ?
何もわからないまま、ただいたずらに時間を使ってしまっている。どうする? ここからどうすべきだ……?
『ノアそっちの状況は?』
『こっちにはまだ敵は来ていない。けど、同じく石を守りに来たセオリと合流した。ナミネと3人で防御を固める』
ノアから報告が入る。まだ、石を狙いには行っていないのか。
それにしてもセオリ……? あの人戻ってきていたのか……。じゃあ、夜空も?
『わかった。こっちを何とか出来次第、俺も向かう』
これで、敵の目的の一つはわかった。あとは……。
『愛歌、結界はどうだ? 破れそうか?』
『ごめん。もう少しかかりそう……。……あら?』
そうか仕方ない、と返事をしようとした時、愛歌が急に俺の中に戻ってきた。
「どうした? ん?」
空気中の魔力の流れが変わり、結界が消えたのを視認した。
「愛歌がやったのか?」
『い、いいえ。私は何も……』
何があった……、そんなこと考えている時間はない。
とにかく様子を見に行くとしよう。
* * *
―――アマハヤ神社・言葉しずく
少し前……、白と別れて約一時間後。
しずくはお腹も少し楽になってきたので、近くの木を仮想の敵とし、軽く体を動かしていた時のこと。
「きゃああああああっ!」
耳をつんざくような悲鳴がアマハヤ神社中心から聞こえてきた。直後から先ほどまでとは違う種類の騒がしさが支配し始めた。叫び声と悲鳴が混ざっているようなそんな騒がしさが。祭りの音楽も消えている。
ただ事ではないと感じそちらに向かった。
「っ?!」
それ以降の人生、そんなに同時に人から血飛沫が上がる瞬間を見ることがあるだろうか? と思うほどいくつもの血を同時に見た。
「人が人を……」
殺し、そして食べている。
(そうか……。ししょーたちが逃がしてしまったというジンマ教団たちが……、人ごみに紛れていて、それで……)
何かを合図に事を起こした。そういう事なのだろう、としずくは何とか保とうとした冷静な心の中で考える。
……目の前で人が死んでいくのを見る。
(た、助けないと……)
と思っているのに、恐怖で足がすくむ。
「なにやってるでござるか、しずく……。こんなところでただ指を咥えて見ているために剣を習っていたわけではないでござろう……。最強の武士になるのでござろうが! 何をやっている!」
そう自分を叱責、奮起し刀を抜き駆けだした。




