赤い祭事変(1)
―――デモル京・結界の外
「この程度の結界に穴をあけるためだけに私が呼ばれるとはな」
正義の弾丸軍グイラがぼやく。
「キッヒヒヒ。申し訳ありません。この結界は私にとっても少々厄介でしてね」
「あっはは、いいじゃん。あんたはもう帰れるんだからさ! それに必要なんでしょ、魂? 今から狩ってあげるんだよ? 少しくらい手伝ってくれたって」
グリンとトリカが言う。
「ふん。まあいい。私は帰るからな。あとは勝手にしろ」
グイラはその場から消えた。
* * *
―――デモル京・青水白
エミと共に祭りを回った。
だんだんとエミの歩く速度が遅くなってくる。
「どうした? もう疲れたか?」
「……うん……、あ! ううん! まだ……、大丈夫……」
強がっているようだけど、もうそろそろ終わりかな……。
しずくと別れてからももう一時間は経つ。流石に動けるようになっているだろうし、一度あっちに戻ってから……。
……確かそんな事を考えていた時の事だと思う。
ゾッ……。
背筋に強い悪寒が走る。
その直後町のあちこちで悲鳴が上がり始めた。
「エミ!」
エミを抱えて建物の屋根に飛び乗る。
「何だこれ……」
町に突如起こった異変は2つ。
1つ目は街中に大量発生した恐獣。あれだけ大量にいるのを対処するとなると骨が折れるな……。
2つ目はアマハヤ神社を中心に張られたらしい巨大な結界。ご丁寧に中の様子が見えない加工済み。
敵は何のために街中にあんな大きな結界を張った? 正義の弾丸軍の目的は契約の石だろ? あんなところに何の目的が?
いや正義の弾丸軍の犯行じゃない? だとしたら誰が何のためにこんなことを……?
「や、やめて! 来ないで!」
眼下で人が恐獣に食われそうになっている。
その間に割って入って顎を蹴り上げて気絶させる。
「ほら早く逃げて!」
そこにいた人を逃がした。俺もまた建物の屋根の上に乗る。
「まずいな……」
どうする? しずくはまだあの結界の中だ。誰が何の目的で行った犯行だったにしても、あの中では誰かが何かを行っている。
しずくならそう簡単に死にゃしないだろうが、まだ実戦の経験が不足してる……。グリンやトリカみたいなのがいたら、そう長くは持ちこたえられないだろう。とはいえ、あの結界だって簡単に通り抜けられるようには作られていないはずだ。そうしてあの結界をこじ開けようとしている間に、恐獣の被害が広がってしまうだろう。
それに……。
(もしこの結界内外の騒動がどっちも陽動だったら?)
契約の石を狙うための陽動だったら、こんなところで時間を使っているのはまずいな……。
それに……。
「はぁ……、はぁ……、はぁ……」
腕の中でエミが自分の耳を抑えながら震えている。
まずはエミを安全な所に連れて行ってあげないと……。エミを抱えたままじゃ、俺が自由に動けない。




