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降誕祭(2)

「ああああ……、もう食べられないでござる……」


 一通り祭りを回ったあと祭りの中心、アマハヤ神社のはずれで休んでいた。

 特にしずくは、あの小さな体のどこにそんなに入っていくのかと心配になるほどたくさん食べており、苦しそうにベンチにもたれていた。


「どうだ? 満足できたか?」


 2人に訊いた。

 結構な時間ここにいたから、満足できたならそろそろ帰ってもいいかもしれない。


「もう少しだけ……、見て回りたい」


 エミが言った。


「拙者はここから動けんでござるよ……。お腹が苦しくて……」


 しずくは呻きながら答えた。


「んじゃあ、エミともう少し回ってくるから、そこで休んでてくれ」

「承知いたした……、うぷ……」


 しずくをそこにおいて、エミと俺はそこから離れた。


「綺麗……」


 日は完全にしずみ、祭りの灯りが映える時間になっていた。

 あと1時間もすれば人も減ってきて、さらに1時間もすれば終わっていくだろう。

 大樹の巫女祭もよかったが、こっちはやっぱ故郷と似てる風習ってのもあって、風情があるなと思わされる。


「エミ」

「……なーに?」

「人には慣れたか?」


 2人だけで話すこともあまりないなと思って、歩きながら訊いてみた。


「……まだちょっと怖い……」


 握っていた手をぎゅっと強めた。


「ま、急がなくていいさ。少しづつ慣れてけば」

「うん……」


 こうして外に出られているだけでも、十分大きな進歩だ。

 以前の生活に少しづつでも戻ってくれれば……。


「あ、あれ。あれ見てみたい」


 エミが指さした先は雑貨やアクセサリーなどが並んでいる店だった。


「ああ、行ってみよう」


 その店に行く。

 美しく輝くそのアクセサリーにエミは目を輝かせていた。


「ここは……。何の店だ?」

「見ての通り小物の店だよ。私の両親はそれぞれ、シンノミヤとフラエル出身でね。両方の文化を合わせたものを作ってるんだ。他では絶対に手に入らないものばかりだよ」


 俺が訊くと店主がこたえた。

 確かに、(かんざし)のようなシンノミヤでしか見ないものなのに、フラエル風の装飾がされているものや、またその反対のものなどがあった。

 その中にあった簪の一つをエミは気になったようで手を取った。


「それが欲しいのか?」

「う、うん……。綺麗だし……」

「ああ、似合うと思うよ」

「え? そ、そうかな……」


 エミは照れながら答えた。


「じゃあ、これを貰うよ」

「そうか、まいど」


 その後もエミと祭りを楽しんだ。


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