地上の異常
「まったくあの死神ときたら、無駄な戦いに変わったと知るや否やすぐ逃げる」
戦いが終わったらしいナミネの方へ、そうぼやきながら近づいた。
まあこっちは目的が果たせたのだから、いいんだけど。またどっかであいつと戦う羽目になるって考えたら憂鬱だ。
「ごめん、白。またあいつ逃した」
ノアもやってきてそういった。
同じことを思ってるのだろう。
「はぁ……、ボク、不必要な殺生はしない主義だったのに。隙あらばボクのこと食おうとしてくるもんだから……」
アルノもこっちに来た。かなり落ち込んでいる様子だ
廊下には何百というジンマ教団員の死体が転がっていた。
「よいのですよ。ここで殺しておかなければ、新たな被害も生まれていたでしょう」
ナミネが言った。
いつもの雅な立ち振る舞いができないほどのボロボロになっていた。
「頑張ったな、ナミネ」
回復魔法をかけてやりながらいった。
「そんな、私は……、ただ、やらねばならない使命を果たしただけです……」
「そういうなよ。誰だって自分の成し遂げたことは誇っていいんだから」
「……ありがとうございます」
とにかく、あとは各地に残るジンマ教団の隠れ家を少しづつつぶしていけばいい。
この国での戦いも終わりが見えてきた。
……ただ気がかりなのは……、あの死神たちだな。
まだ余計なことを考えていなきゃいいんだが……。
* * *
―――数日後・紅花夜空
「ふむ。駆け足ではありましたが……。うん、やはりあなたは筋がいい。これだけの期間で私の修行の大抵を終わらせることができた」
セオリさんが言う。
「そうかな。まだ……、まだ学んでいないことが多いように感じるけど……」
「そんなことはない。もうここからはあなた一人でもやっていけるでしょう」
修行すれば修行するほどに、自分にはまだ足りないものがたくさんあるな、と気づかされるんだけどな。
「とはいえ、まだ時間はありそうです。あと少し……。ん?」
セオリさんが怪訝な顔して地上を見た。
「……という風にはいかないようですね」
「え?」
「誰かが私の張ったデモル京の結界に穴をあけました」
え? そんなことできるやつがいるの?
地上では今一体なにが起こって……。
「修行の残りは後にしましょう。少し下が気になります」
「わかりました」
とはいえ、少し不謹慎かもだけど、私も修行の成果が試せる機会が来たな、と少しワクワクしてしまっていた。




