ナミネの罪
「ナミネに聞きたいんだが」
「なんでしょう?」
「やっぱジンマ教団の本拠地とか……、もわからねぇのか?」
それがわかるんなら一気に乗り込んで殲滅もできるんだが……。
「申し訳ありません……、私は何も……」
「だよなあ……」
「しかし! もし白様が望むのなら! 拘束してこの枷を解き、拷問でもして"あいつ"から聞き出してくだされば……!」
ナミネが必死の顔でそう言う。
「……その覚悟はあるんだな?」
「白クン!?」
「し、ししょー?!」
アルノとしずくがその言葉に反応する。
「落ち着けよ。何も本当に拷問しようってわけじゃないさ」
それにあのもう一個の人格の破綻具合を見れば、拷問なんかしたところで吐くとは到底思えない。
「ただせめて、ナミネが自分を許せるようになるよう、手伝ってやるってだけだ。でもそれくらい苦しむ可能性もあるって話」
「覚悟はできています」
その言葉に嘘はなさそうだ。
「愛歌、どうにかできるか?」
「はいはい、だと思いましたよ。ちょっと待ってね」
愛歌がナミネの中に入る。
「なるほどね」
そう言ってすぐに出てきた。
「二重人格……、解離性同一性障害は、特に幼少期とかの強いストレスとかトラウマとか、そういうのから自分自身を守ろうとした結果、自分が自分であるって感覚が失われ、自分を俯瞰してみる形になっていき、最終的に別の人格として切り離されてしまう。まあちょっと語弊はあるかもしれないけどそんな感じのものよ。覚えはある?」
「……はい。いくらでも」
そりゃあのいかれた集団の中にいたら、まともな感性でいたら疲れるだろう。
「なるほど。基本的なこの症状はそこまでなんだけど、あなたの場合、魂の力が強すぎるのね。もう一つの人格が魂源:描画と結びついてしまっている。私が提案できるのは、それを強制的に引き離しあなたに統合するってことかな」
「……っ!? それって……」
「うん。つまり性格はそのままに、もう一つの人格がもっていた、攻撃性、趣味、その他色んなものもあなたに統合されてしまう。それにあなたは耐えられる?」
「……」
ナミネは恐怖からか顔が引きつっている。
「もちろん負けてしまえば、人格を完全に乗っ取られてしまう可能性もあるわ。それでも、やる?」
愛歌が優しく問いかける。
「……白様たちは今回の事、私のもう一つの人格がやったことだから、といってくださいますよね」
「ああ……、だって、そうだろ?」
「でも、あいつから、私自身の過去から逃げ放任していた、その事実は変わりません。それは私の罪です」
……強い奴だな。超人じゃなかった俺が同じ境遇だったら同じことが言えただろうか?
「覚悟はできてます。もし私があいつに負けてしまったら、その時は白様、あなた様の手で……」
「わかったよ。その時は任せろ」
「ありがとうございます」
心配と覚悟が決まった顔をしていた。
「じゃ、庭に行きましょう。ここじゃあ、ちょっと危ないでしょ」
「そうだな」
俺たちは庭に出た。




