魂源の進化
外からは騒がしく怒号が聞こえてくる。
定期的に何かが投げ込まれ、屋根や庭の地面に当たる音、時には窓を破る音すら聞こえてきた。
パンッ! パンッ、パンッ、パンッ! ……パンッ!
今度投げ込まれたのは……。
「爆竹か……。よくやるよ……」
俺は呆れながらつぶやいた。
「外はすごいものです。娘を返せ、弟を返せ、孫を返せ、町を掃除しろと罵声が飛び交っている」
俺たちがいた部屋に入ってきたセキヤミが言った。
「俺この件セキヤミにしか報告してないんだけど、お前、言いふらしたりしてないよな」
ここはナミネ邸の中のナミネを軟禁をしている部屋だ。
部屋にいるのは俺、しずく、アルノ、もう一つの人格を死神の枷で封じているナミネ、あとセオリの代わりに政治を執り行っているうちの一人であるサシラって男、そして今部屋に入ってきたセキヤミだ。
サシラはまあ、セキヤミやナミネの上司に当たる人たちと考えてくれていい。
「まさか。私は然るべき人物に報告したまでですよ」
サシラに目を向けてセキヤミが言った。
「私も必要以上に話を広めてはいませんし。ですが、今回の事がなくとも、ナミネさんは元から敵が多すぎる」
「そういう質でして」
もう一つの人格ではない、ナミネとしての事には毅然としてそう答える。
こういった態度もあり、気に食わないと思う人がかなりの数いたのだろう。そしてそれがこけて転んでしまえば、一斉にみんなでたたき出す。
まあ、人間らしい坑道と家は人間らしいものだよな。
「にしても、町の清掃ね」
たしかにナミネはこっぴどく街を汚してくれちゃったからな。風情も何もあったものではない。
「あれ、どうやったんだ?」
「何をです?」
「何だっけ? えーっと絵描世界? 魂界花とも言ってたか?」
一瞬ナミネの魂源を具現化したみたいな世界も作り出してたな。
「ああ、あれは……、魂源にはいくつか進化があるといわれているのですが」
なんだそれ初耳だな。イ〇ブイみたいな感じで進化先が変化すんのか?
「どれも現実を侵食し、世界の法則すら書き換えてしまう事もあるそうですが、その一つが魂界花なのだそうです。私は……、あまり意識をせずに使えていました。はあ……、正直そんなもの望んではいませんでしたが」
どんなものにも天才っているものなんだな……。
「あまり詳しくはないですが、自身の魂源の力で満たした空間を虚数空間に作り出し、そこに自身と敵を引き込むことで強制的な1対1を作り出しつつ、現実世界に存在する物理的な制約を取り払うことでより自由の魂源をより自由に使う事が可能になる」
「うーん、固有結界とか領域展開みたいな感じ」
「あのなぁ。俺とお前にしか通じない例えはやめろ」
まあ、イメージは似てるんだろうが……。
「でもナミネの時はすぐに消したよな?」
「私の場合は少し運用が違って、作り出した空間を内に閉じ込めているのです。そうすることで想像するだけで魂源:描画の力を引き出し、あとは線を引くだけでそれが形になる」
だからあんなぽんぽこ怪物を生み出せたってわけか。
「魂源進化、ね……」
今後そういうのを使う敵も現れるかもしれない。
身に着けておきたいところだが、条件もどんな進化があるのか、その情報すらも足りてない。
まいったなぁ……。




