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この怒りは誰に【閲覧注意】

今回までで閲覧注意が終わりです。

前回までの2話と比べると多少描写は軽くなってると思います。

「白、こっち。人の気配がする」


 愛歌が部屋の端のドアを指さしていう。


「わかった」


 今度は普通のドアだったようで、少々さびていて重かったが普通に開けることができた。

 そこはまた暗い部屋だった。

 全面石でできていて、ドアのある場所から部屋に降りていくための壁伝いの階段あるだけ。そんな殺風景な部屋だ。

 階段を降りていく。13段ほどおりると床についた。


 ぴちゃ……。


 その最後の階段を降りるとそんな音がした。

 床が水たまりになっているようだった。


「何の液体だ?」

「ええ……、調べたくないけど……。うえぇ……、やっぱり尿よこれ。血も交じってるけど」

「はあ?」


 なんだってんなもん撒き散らして放置してんだ……?


「ほらあそこ。ドアのあるとこ段のすぐ下に排水口がある。多分ここは捕まえた子ども用の換金部屋。トイレがあるようにも見えないからそのままたれながさせてるんじゃないかしら……」


 そしてそのうち排水口が詰まって、この有様か?

 人を監禁するための場所はいくつか見てきたけど、中でもこいつは最悪だな。

 愛歌とそんなやり取りをしながら部屋の真ん中を区切っていた鉄格子、その扉にかかった鍵を壊しその中へ入る。


「ん? 誰かいるのか?」

「ひっ」


 俺の声に返事をするような悲鳴が聞こえた。

 息をひそめていたというのに、俺に見つかってしまった。その恐怖から漏らした声といった感じだ。

 光源魔法を声の方向に飛ばす。

 そこにいたのは全裸のエミだった。


「エミ」


 生きていてよかった、その安堵とともに怯え切った子犬のようなその姿に怒りも覚えた。

 歩いて近づこうとすると柔らかい何かを踏んだ。

 ……それは男の子の体だった。

 薄暗いからよくわからないが、切られた腕と陰部から血がすでに出ていないとこを見るに、既に亡くなっているようだ。


「お願いしますお願いします。殺さないでください殺さないでください殺さないでください……」

「エミ?」

「なんでもします。またご奉仕も致します。だから殺さないでください殺さないでください殺さないでください」

「エミ、エミ、エミ。大丈夫、大丈夫、俺だ」


 エミに近づいていき腕に巻き付いていた鎖を斬り、そっと抱き寄せた。


「お兄、ちゃん……?」

「ああ、そうだ。もう、大丈夫だから。無事でよかった」

「うん……」


 どっと安心してしまったのだろう。そのまま静かに眠ってしまった。


「愛歌、体の状態を確認してやってくれ」

「了解」


 その間に適当な大きさのタオルを取り出して巻いてやり、抱き上げた。

 

「五体満足、体の内部も問題はないわ。ちょっと栄養失調気味だけど」

「そうか、ありがとう」


 発見が早かったのが幸いしたか 問題は精神の方だが。


「こっちはダメ……。もう、手遅れ……」


 アルノが悔しそうにつぶやく。

 死んでいても心臓と脳さえ無事なら蘇生魔法が掛けられる。

 しかし蘇生魔法は時間が経てばたつほど期待値が減っていき、2時間ほどで殆ど蘇生不可能になる。

 彼らはどうみてもそれ以上の時間が経っているだろう。


「こいつらが殺されるところをこんな間近で見させられていたんだ……」


 自分の時はいつになるかと常に恐怖する。この一週間そんな日々が続いたのだろう。

 故にさっきのエミはそんなはあんな反応になっていた。


「……ちっ……」


 いったい、俺は誰に、何にこの怒りを向けたらいいんだ……。

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