第4話:夢見るパンドラ(4)
翌日。子どもたちが学舎で勉強する時間、何をしていようかと広い院内を歩き回っていた。
院庭に出て海岸にど〇森みたいな坂から小さな砂浜に出る。
「あれ?」
その浜辺に人影が一人。女の子が海の方を見ていた。
「あれは確か、サニちゃんって言われてた……」
昨晩、夕食を一人で食べてた子だ。
そういえば授業への参加が免除されてるとか言ってたっけ。
「何してるの?」
声をかけてみる。近くで見ると、悲しそうな怒っているような、そんな顔をしている子だと思った。
一瞥され、また海の方をみた。……つまり無視された。
「授業、免除されてるんだっけ」
「……私には必要ないので」
「必要ない?」
「放っておいてください。私は死にたいんです」
すうっと動き、どこかに行ってしまった。
気を悪くするようなことを言ってしまっただろうか。
それにしも死にたいって……。
「ああ……、あの子ですか……」
サニちゃんって子の事がどうにも気になってしまい、院長さんに訊いてみた。
そこにたまたまノアちゃんも居合わせていた。
「とても特殊な事情を抱えた子でして、特別に勉強への不参加を許可しているのです」
「特殊な事情?」
「……余命がわずかでして。お医者様によると、一年半程と聞いております」
え、急に重。
「足が動かないのもその影響ですか?」
「いえ、それはまた別の事情でして……」
少し口ごもる。
「詳しい事情は彼女のプライバシーのために言えませんが、そうですね。ドミノの様に不幸続きな人生で……。いろいろあった後に、里親と歩行機能を失って、つい先日不治の病を患ってしまっていることがわかりました」
「……」
何となくで聞いてしまったことを後悔した。
「それまでは太陽のように笑う、とても強くいい子だったのですが。あんな事があっては、私共もどう接すればいいのかわからず……」
「……」
「本当は子どものそういった事情をお話しするのはよくないんですけれど……。冒険者の方と接することで、少しでも以前の明るさを取り戻して、残りの人生を楽しんでくれれば、と思いまして……」
え、なんか、プレッシャーなんだけど……。
「もちろん、無理にとは言いません。少し話しかけてみてくれるだけでいいんです。よろしくお願いします」
大変なことに首を突っ込んじゃったなと思った。
明日もよろしくお願いします。




