第4話:夢見るパンドラ(3)
時間が経ち夕方。
食堂で子どもたちと夕食を食べていた。
「お姉ちゃん、なんで彼氏いないの?」
「大人になったらできるって、本に書いてあったよ」
どんな本だよ……。
「……うん。私がちょっと特殊なだけかもね」
大人になったら自動的に恋人ができる、なんてそんな幻想抱いていた時が私にもありましたよ。
なんて、子どもたちの夢を壊しそうな言葉をぐっと飲みこんでそう返した。
「じゃあ、俺が夜空姉ちゃんの彼氏になってやるよ」
「もう少し大きくなったらね」
その時には私はこの世界から元の世界に帰ってるだろうけど。
いいなぁ。子どもって純粋で……。
「ね、みんな、あの子は誰?」
食堂の隅で一人静かに食事している女の子を見ながら言った。
院庭では見かけなかった子だったからだ。
女の子と言っても、私とほぼ変わらない年齢に見える。
孤児院には特例を除いて16歳までいれるから、もうそれに近いか、その特例の子か。
「サニ姉ちゃんのこと?」
「サニちゃんていうの?」
「うん。姉ちゃん、いつも一人なの」
「最近のサニ姉ちゃん話しかけても怖いから、俺嫌い」
はっきり嫌いって……、同じ部屋にいるんだから聞こえちゃうよ?
子どもって純粋だけど、残酷だな……。
「腰に何かつけてるのはなに?」
「えーっとなんだっけ……、ホ、ほ……」
「ホショク……」
「補足装置、です」
年齢の高めだった子が答えてくれた。
あーえっと聞いたことあるかも。
「ああ、あれが」
座ってて起動してないからわからなかったんだ。ちゃんと見たことなかったし。
この世界において、車いすや松葉杖の代わりに使われるもの。
腰に魔法陣を発生させて上半身を浮かすことで、自由歩行……、というか自由な移動を可能にするらしい。
「足が悪いの?」
「さあ」
「知らない」
「でもサニ姉ちゃん授業も免除されてんだよ」
「ねーずるいよね」
なんか色々事情のある子なのかな?
その子の事がなんとなく妙に気になってしまった。
明日もよろしくお願いします。