ハイカラな街で(1)
「二重者?」
その日も冒険者として酒場で情報を集めつつ、依頼を待っていた。
そして来たのがどこかの街の代表としてきた人らしく、持ち込まれた依頼がその"二重者"を捕らえ正体を暴いてほしいというものだった。
「なんだそれ。目が二重の人間のことか?」
「そんなわけないでしょう!」
軽くボケだったのに、そんなに強いツッコミをいれてくれなくたって……。
とはいえそんな余裕もないくらいにおびえてるって感じみたいだな。
「どう説明したらいいか……」
「じゃあ、その二重者とかいうのの被害を教えてくれよ」
「はい……」
そいつの被害者は全員男性。
夜に一人で歩いていた男性が朝ひどい姿で、精も根も尽き果てた骨抜きになった状態でみつかるらしい。
襲われると一週間は気を失ったままになってしまうという。
「つまりあんたの住んでる町にはヤバめの阿婆擦れがいるって話?」
「そんな簡単な話ではないのです!」
いや今のはボケじゃないんだけど……。
「被害者から話を聞くと、自分を襲った相手はみなその人にとって身近な女性だったそうなのです」
妻、恋人、仕事の同僚、友達、幼馴染、片思いの相手、姉、妹……。
そういった身近な人間から被害? を受けたと証言しているそうだが、言われた方はこれまた全員身に覚えがないのだという。
まあ、いわゆるドッペルゲンガーだな。
いや、どこのB級エロ漫画なんだよ……。
とはいえそうだな。配偶者や恋人ならまあ問題ないとはいえないだろうが、被害のレベルも低いだろう。
でも、そうでない人が相手で心的外傷でも負っていたら、日常生活やその中でのコミュニケーションに支障が出るだろう。
またそいつは街ん中で見境なく犯行を行っている。
夜中だから可能性は低いが、もし子どもにでも見られでもしたら、やはりトラウマを与えてしまうだろう。
エロ漫画みたいだな、と笑って済ませられる問題でもない……、か。
「えっと……、師匠……」
しずくが申し訳なさそうに聞いてくる。
「なんだ?」
「その話があまりみえてこないのでござるが……、その被害にあっている男性は、身近な女性の姿をした何者かからのリンチにあっているということでござるか?」
ん? いやいや、今の話からどうやったらそんな話に解釈を……。
勘違いしないでほしいのだがしずくは、子どもはコウノトリが運んでくる、みたいな奇妙奇天烈な勘違いをしているわけじゃない。一応常識の勉強をしているときに、何の流れだったかわすれたがそれは把握したのを覚えている。交尾という行為の認知もしてたはずだ。
とはいえ世間の認識とはどこかズレた認識をしているのは間違いなさそうだ。
「……うん、まあ、お前はそのままでいいよ、いったん」
「?」
どうやって、そもそも何を教えたらいいのかわからず、一先ずそう言っておいた。
とにかく、俺たちはその依頼を引き受けることにしたのだった。
はあ……、前からジンマ教団とは特に関係のない依頼ばかり受けてしまうな……。




