手段と目的(7)
「そうか……、なら、貴様たちを生かしておくわけにはいかないな」
そう言うとデズテは何か宝玉の様なものを取り出した。
「これは取引でもらった魔法の玉だ。そのものが持つ力を増幅する効果があるらしい」
「!」
そうデズテが説明しながら宝玉を使うと急に異常なほどに体が重くなった。
「し、ししょー?!」
しずくがこちらに駆け寄ってくる。
「な、なんだ……?」
どんどんと重さが増していき、息も苦しくなってくる。
「いくつかこの宝玉にも種類があるらしいが、これはその者の魂源とかいうものの力を引き出すものであるらしい」
んなはた迷惑で厄介なもん作ってくれちゃったのはどこのどいつだよ。
「私の場合、欲望で人を縛り付ける。対象がもつ欲望の深さ大きさ、それに応じてその者の動きを制限する」
「くっ……、うっ……」
水闘気で洗い流そうとするのだが、なかなかうまくいかない。
まずい。いくら戦闘能力皆無の相手だって、じっくりやれば俺だって殺せるだろう。
このまま動けなくなるのは、まずい。
「し、ししょー!」
「なんだかなんだ言いつつ、貴様も欲の深い人間ということだ!」
高笑いがうるさい。
「なるほど……」
しずくは呟くとふっと近くから気配が消える。
「お、お前、なぜ動け、べぶし!」
デズテの方をみるとしずくが腹部を消し飛ばしていた。
「な、なぜ動ける?! 例え子どもだろうと、欲のない人間なんて存在しないだろう! 望みも夢もない機械のような人間だというのか?!」
「いや、多少の動きづらさは感じているでござるよ。ただ、戦闘不能になるほどではないでござるな」
「っ?!」
「拙者自身は笑ってしまうほどの夢を、大望を、抱いているでござるが……」
刀を抜きながら話し続ける。
「それは自身から溢れる欲、というよりも、願いに近いものでござる。どうやら貴様の能力はそこまでは汲んでくれないようでござるな」
そして刀を構えた。
あいつ、嘘だろ……。
「ま、まて! 我を殺せば貴様らは」
「斬らんでござるよ。貴様程度の敵を斬ってしまっては刀が無く。しかし!」
そこまで行って突如動き出し、そして。
コーンッッ!
甲高い音と共に、デズテの後ろへ通り過ぎていた。
その狙いは……。
ピシッ……、パリィン!
デズテの持っていた宝玉が音を立てて割れていった。
「あ、ああ、ああああ!」
突如、体が動くようになる。
「くっそ、戦闘能力皆無のくせに厄介な魂源もってんな……」
しずくがいなかったら危なかったな、と思いながらデズテを縛り上げた。




