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手段と目的(5)

「この村について少しはお判りいただけたでしょうか」

「ああ、色々とな。噂通りのとこだったって伝えておくよ」


 その地域から出ていく道の前で数人の人々に囲まれながらそんな会話をする。


「ご満足いただけたようで何よりです」

「またいらしてください!」

「夏や収穫前の時期など、もっと美しい風景になりますよ」

「ああ、機会がありゃ来るよ。じゃあな」


 まあ、そんな時期には俺はこの世界からいなくなっているだろうが……。

 そんなことはどうだっていいな。この世界に留まらなきゃいけないとしても、ここに戻ってくることはないだろう。


「さて、あとは、あいつを回収して……」


 振り返ってそうつぶやいた時の事。


「悪魔が! 悪魔が見つかったぞ!」

「?!」


 な……!

 それって……。


「おい! お客人がまだいるんだぞ」

「そ、その者はいまどこへ?!」


 しずくが血相を変えてその報告に来た人物に走っていき掴みかかる。


「み、見つけた者たちが、担いで地主様の下に」

「っ!」

「あ、おい、バカっ!」


 しずくは真っすぐに地主の家の方に駆けて行った。


「まったく……」


 一旦知らないふりして、あとから回り込めばよかったんだ。

 こりゃあとでお説教かな。

 などと思いながらしずくを追いかけた。


 ***


「ふん。よく一年も逃げ回ってくれたものだ」

「デズテ様、この者、いかがいたしましょう」


 デズテ……、地主の前に手足を縛られた少年は連れてこられた。

 蹴られデズテの前に投げ出される。

 ここ来るまでにも暴行を加えられていたのだろう。その体は血とあざにまみれ、腕と足は足は曲がるはずのない方向に曲がっていた。


「う”う”……」

「悪魔の処理は危険故、我が個人で処理をしておく。そなたらは日常に戻るがいい」

「承知いたしました」

「はあああ!」


 話している中しずくが人々を飛び越えてデズテに斬りかかった。

 金属音が境内に響き渡る。


「?!」

「貴様、何者だ」


 しかしその刀は別の何者かに止められた。

 昨晩、デズテの横にいた従者だとしずくは気づく。


「き、貴様! デズテ様に……! っ!」


 そう叫びしずくに攻撃しようとした者の首元に刀を突きつける。


「拙者は余計な被害は出したくない。さっさと失せろ」


 しずくの剣幕に気圧され悲鳴を上げながら、少年をここへ連れてきた人々は去っていった。


「誰だ貴様は」

「拙者は政府の命を受けて調査に来た冒険者の見習いでござる」


 しずくは話しながら刀を二振り、少年を拘束していたロープを切った。

 

「またあの官僚の小僧か。しつこいやつだ」

「でもあの方の勘は、当たっていたようではないでござるか?」

「ちぃ。しかしよいのか? はたから見れば貴様らはテロリストにも相違ないぞ」

「そこらは貴様をとらえ、説明をすればよいだけのこと」

「できるものならやってみろ! 我には優秀な冒険者が何人も付いているのだ! 貴様だけでは到底!」

「それってこいつらか? セキヤミが雇ったやつらを金で雇いなおし、嘘をつかせた。その後自身の従者として使ってる。そんなとこか?」


 デズテの後ろから白が話しかける。

 デズテが雇っていた冒険者全11名がすでに白によって気絶させられ縛り上げられていた。


「な……」

「張り合いがない……。フラウロウの冒険者に比べると雑魚ばっかだな。いや、権力者の陰でぬくぬくやってたやつらと比べるのも失礼か」


 しずくが暴走してしまった物の思いもよらず、デズテを追い詰めることができたのだった。

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