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手段と目的(2)

 その町は、思っていたよりも発展していなかった。

 それもそのはずで、この県はシンノミヤ国の中でもっとも小さい地域の一つでありながら、有数の米の産地として知られているそうだ。

 きっと民家の数より田んぼの数の方が多いんだろう。


「ししょー。あそこに人だかりが……」


 しずくが指さしたところには確かに人だかりができていた。

 町人の様子を伺おうと近づく。


「んん?」


 人々は看板に張られた大きな紙を囲って眺めているようだ。それは何かの……、ランキングのようだった。

 不審に思ったのは、それを眺めている人たちがあまりにも殺気立っていたから。これが幸福度の高い地域の人間たちの様子か……? と思ったのだ。


「おや? 冒険者の方ですか?」


 と思ったら俺たちを見つけた人が急に笑顔になってこちらに話しかけてきた。

 その声に気がついた他の人たちも急に笑顔になって、こちらを向いてきた。


 ゾッ……。


 背筋に寒気が走る。

 なんだ? なんでこんな……。


「ようこそいらっしゃいました! この度はなぜこのような田舎にいらっしゃったのですか?」

「このあたり地域って、幸福度が高いだろ? 他と比べて。その理由を調査して欲しいって頼まれてな」


 あまり悪い言い方をせずに正直な理由を伝えた。


「なんと、そういう事でしたか! いやはやこの辺りは地主様の統治のおかげで我々、とても穏やかに過ごさせて頂いておりますゆえ」

「そういう割にはその看板をみんな睨んでたみたいだけど……」

「こちらは納めた年貢の量のランキングですよ」

「年貢の量?」


 んなもんを競わせてんのか? また穏やかじゃあないが。


「地主様は我々に平等に田畑を分け与え、暮らしを豊かにしてくださっています。年賀の量はいわば感謝の量。量の多かったものは来年も頑張らねば、と、少ないものはさらに努力をせねばと、身を引き締めていたのですよ」


 ふーん。なんていうか……、息苦しそうなとこだな。

 まあここの地主はかなり慕われているようだし、本人たちが気にしていないのなら、どうこういうほどのことでもないだろう。


「さて! お国からの使いの方とあっては、こちらも見合ったもてなしをして頂かなくては! 宿をご用意いたしますので、しばしお待ちください」

「いや、それくらい自分たちで……」

「そうはいきません! しかしあまり期待はなさらないでください。なにせ田舎の村ですからな!」


 いや最悪テント、って思ってたからありがたいっちゃありがたいが……。


「しかし、夕飯の方は期待していただいてよろしいですぞ! なにせ、それだけが自慢の地域ですからな!」


 ……、わからん。なんだこの村。

 

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