最悪のエンカウント
愛歌の誘導の下、廃墟をゆっくりと追いかけていく。
『やつら地下に入ったわ。この位置』
愛歌がピンを指す。
そう。オンラインゲームとかでよくあるやつ。俺にしか見えないけど。
『中は綺麗になってるわね。比較的新しめの施設に見える』
なるほど。廃墟に紛れて新しい拠点を作り出してたってわけか。
愛歌がピンを置いた位置に来て蓋を開ける。
穴に梯子が掛けられていた。
「降りて様子を見てくるから少し待っててくれ」
そういって穴を飛び降りた。
思ったより少し深めの穴を落ちていき、床に着いた。
「安全そうだな。降りてきていいぞ」
上に向かって声を掛ける。
程なくしてしずくが降ってきた。
『愛歌、中に入った。どっちだ?』
すぐに愛歌に訊いた。
『こっち』
俺の視界にナビゲーションが表示された。
アルノが来ないなと思ったら梯子を下りてきた。
「こっちだ」
愛歌の示す方に歩き出した。
「2人とも梯子って知らないの?」
「壁を登りやすくするためのものでござるよな?」
「上り下りするためのものだよ?! なに?! 登り"やすく"って?!」
「いや、これくらいなら……。幼い頃から海岸の崖から砂浜に行くときなどやっていたでござるから」
「よく死ななかったね……。ってか白クンも! 先生やってるなら、危ないこと教えちゃまずいでしょ」
「あー悪かったよ」
小さい声で話しながら進んで行く。
「ここよ!」
少し行った先の扉の前で愛歌が待っていた。
「この中見て」
見るとそこは小さな寝室だった。
いや、寝室というより独房というか……。
しかし普通じゃないところは、ベッドが割と大きい。
そしてその上で……。
「や、やめて! おじさん!」
小さな女の子がさっきの男2人に無理矢理服を脱がされそうになっている。
「きゃははは! ネズミみーっけ!」
俺たちが来たほうから声が聞こえた。
その声が響いた途端、ゾクっと背筋が凍った。
「トリカ……?!」
「な、なんで、私気づかな……」
これだけの殺気を纏わせているというのに、なんでここまで近づかせるまで気づけなかったんだ。
愛歌もそのことに驚愕している。
俺が知っているトリカは、猫を被った状態しか知らない。
一応ノアの戦闘の記憶を愛歌から見せてもらったりはした。しかし、それでみるのとは比べ物にならないほどに、こいつはヤバい、と感じさせるオーラを放っていた。
「しずく! アルノ! 中にいる女の子を助けて急いで逃げろッ!」
「! し、承知した!」
しずくもそのさっきに気圧されていたらしいが、俺の声で急に走り出す。
「愛歌2人の逃亡をサポートしたら俺のところに戻ってきてくれ」
「了解!」
なんで正義の弾丸軍の奴がこんなとこにいんだよ!
なんて心の中で文句を言うが、そんなことは今考えてる場合ではない。
まったく……、最悪の敵とエンカウントしてしまったものだ。
―――世利長愛歌の記憶領域:【トリカ】―――
主人公たちと敵対する組織『正義の弾丸軍』のメンバー。フラウロウで町娘になりすまし暗躍していた。
主人公サイド最強のノアと渡り合う戦闘能力の高さを見せた。
血と戦闘で性交と同じ悦楽を得るヤバいヤツ。




