獣人の森へ
数日かけ、ナミネに紹介された獣人の集落の一つに到着した。
族長だといっていたロップイヤーの兎獣人に書簡をわたし話をしていた。
「……。なるほど、セオリ様の遣いですか」
ということになっている。
獣人の人たちは人間っていうだけで、こちらに不審な目を向けてくるもんだから、そういうことになっていないと滞在も難しい。
「ああ、この辺りで霊脈の乱れを感知したとかで」
「もしかして、あの人たちかな……」
族長の隣にいたロップイヤー女性獣人が言う。
「あの人たち? ああ、お前が前に言ってた」
「はい。この前森で食料を集めていたら、見慣れない人影をみつけたんです」
「森で……? あーいや……」
魔界は魔霧で満ちてるって聞くし、何世代か経ても獣人は耐性があるのか。
そもそも肉体だって普通の人より強靭だしな。
「不審に思い追いかけてみたんですけど、あまりに村から離れてしまうものですから断念したのです。でも確かに、霊脈の集まる方へ向かっていたかと……」
「場所、わかるか?」
「案内しましょう」
女性獣人についていき、その不審者がいたという場所に行くことになった。
「2人はどうする?」
しずくとアルノに訊く。
「もちろん、いくよ」
「拙者もお供するでござるよ」
『ねえ』
体の中にいた愛歌が俺に訊く。
「なんだよ」
『私には聞かないの?』
「聞く意味あるか?」
『そーだけどさ!!』
今回は調査ということもあり、愛歌にもついてきてもらったのだ。
『もう、せっかくのノアちゃんとのデートを抜け出してきたってのに』
「デートじゃないけどな」
なんで二人で仕事を任せていただけでデートになるんだ。
森を歩き、不審者を見つけたといっていた場所まで行く。
「当時追って行ったのはここまででした」
「なるほど。で? どっちに向かって」
「あちらですね」
『なるほど、確かに霊脈の流れを感じるわね』
愛歌が言った。
「じゃあ、行ってみようか。あんたはここまででいいぞ」
「わかりました。お気をつけて」
獣人の女性はぴょんぴょんと森の中を駆けて戻っていった。
やはりその動物に合った能力を持っているのだろうか。
そんな事を考えながら、森の中を歩いて行った。




