ナミネの調査
「あ! お兄ちゃんおかえりなさい!」
宿に帰るとエミがそう言って出迎えてくれた。
「大活躍だったって聞いたよ!」
「ああ、大変だったよ」
「お疲れ様。お昼ご飯、そろそろできるよ」
「そうか。少し休んだら食堂の方に行くよ」
「うん、まってるね!」
エミに引っ付かれながら廊下を歩く。
何を思ったのかエミはしずくと出会う数日前だっただろうか、「お兄ちゃんって呼んでいい?」などと言い出し、なんか懐かれた。
女将さん曰く、ずっと兄弟姉妹がほしいといっていたものの幼い頃にお父さんが亡くなってしまったものだからそれが叶わなかった。若い人もあまり長くは宿に泊まらなかったものだから、少し年上の人がいてくれて喜んでいるのだとか。
俺も幼い頃に兄を亡くしているし、そもそもかなり歳が離れていたし、妹ができたみたいで悪い気はしない。
「お二人は本当に仲が良いでござるな」
「しずくちゃんも活躍したんでしょ! 頑張ったんだね!」
「う、うむ」
しずくはしずくでエミと仲良くしている。
こっちの二人の方が年が近いし、それこそ姉妹みたいで微笑ましい。
「そういえばお兄ちゃん。ナミネさんからお手紙届いてたよ。今朝に」
「ん、そうか。ありがとう」
「うん、じゃあね!」
エミは手伝いに戻っていった。
そうか、もう15日経ったか。
「しずく。あとでナミネの家に行くが、体力は大丈夫か?」
「うむ。問題ないでござるよ」
ということで内容は見なくても一応わかるが確認し、俺たちは昼食の後ナミネの家に向かった。
「お待ちしておりましたわ」
「わりぃな遅くなって」
ナミネに出してもらったお茶を飲みながら話をする。
「いえ冒険者としての仕事も大変でしょうから」
ナミネが俺たちの前に座る。
「さて、調査の結果ですが……」
「何かわかったのか?」
「申し訳ありません詳しいことはまだ。けれど、このアマノク大陸の北東部の霊脈で妙な乱れを発見しました」
「乱れ?」
「はい。ここら一帯はいまだに開発が進んでいない巨大な樹海になっています」
大人数が身を隠すにはうってつけ、か……。
「近くに獣人の集落がありますので。まずはそちらを拠点にするのがいいでしょう」
「……獣人?」
「はい」
「獣人って、魔界にしかいないはずだよな」
「はい。しかしセオリ様がこの世界にいるという事が影響し、その昔数人の獣人がこの国に迷い込んでしまったそうなのです。セオリ様が保護したのですが、人のいる場所に住むのはためらわれたらしく今も森の中で集落をつくって生活しているのです」
なるほど……。
やっぱ、セオリって規格外の存在なんだよな。あんな親し気な感じだから忘れがちなんだけど。
「とにかく、こちら獣人の集落に対いるための書簡です。これがあればあの方々も受け入れてくださるでしょう」
「ありがとう」
俺たちはナミネの調査書を確認し、獣人の集落に向かうことになった。




