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歪んだ愛情と正義のカタチ(4)

「ってなわけで、俺たちが見た一晩を挟んだ夜と朝に奥さんは、例の小屋に行っていた。どちらでも小一時間ほど中に滞在したのちに出てきてこの家に帰宅。他は……、確かに夜の方では子守歌が聞こえました。他はわからない」


 その昼酒場で依頼主と落合い、そう報告した。


「聞きたいんですけど、奥さん昼間はあの小屋には行ってないんですか?」

「いや、昼間の事は……。少なくとも休日には行っていなかったと記憶していますが」

「そうですか……」


 ノアを連れてこなかったのは失敗だったな。普段ならあいつに見張らせたんだが……。


「まあいい。とにかく、このあと小屋に入り込んでみようと思います。どうです? 着いてきますか?」

「ええ、ぜひ、同行させてください」

「了解です。しずく、念のため警護頼んだ」

「! 承知した」


 仕事を任されて嬉しいのか、徹夜明けだというのに元気にそう答えた。


 一時間後、例の小山でやってきた。


「よし、あけるぞ」

「はい」


 ドアノブを壊し、中に入った。短い廊下に扉が2個あった。


 ガサ、ガサ……。


 そのうちひとつの奥からそんな物音がした。


「とりあえず、こっち、入ってみるぞ」


 ギギギギギ。

 

 扉を開ける。


「なんだ?」


 その部屋は妙に空気が生暖かくむしむししていた。

 軽い光源魔術を作り出し、部屋の様子を探る。

 部屋の壁にはグラフの様なものや、何かの記録が書かれた紙がはっつけられていた。


「し、ししょー! あれ!」

「ん? うわ……」


 しずくが上ずった声を出しながら指さした部屋の一角には、大量のネズミの死体があった。中にはバラバラになっているものもある。

 中に入って、壁際に張られた物を確認する。

―――昨日よりも体重が増えた。

―――前よりもたくさん動くようになった。

―――今日は初めて喋った。


「マ゜………、マ゜………」


 日記のように書かれたそれをみていたら、部屋の暗闇の中からそんな声が聞こえ背が凍った。

 そちらの方に光源魔術を移動させる。


「?!」

「ひゃあ!」

「うわぁあ!」


 最初そこには人間が天井の角に張り付いているのかと思った。

 しかしそうではなく……。


「じ、人面蜘蛛………?」


 そうとしか言い表すことのできない異形の怪物だった。


「マ゜………、マ゜………」


 口があるためか、そう呟いているのだが、何が言いたいのかはわからない。


「しずく! しっかり守っておけ」

「承知した」


 なんなんだこいつは………?


「あ、あの………」

「なんだ?」

「あ、あれの顔………、まさか………」


 依頼主がその怪物をみて驚く。


「失踪した息子にそっくりだ………」

「は?」


 ………そうか、この壁の紙。まるで育児日記。

 この化け物を息子に見立てて………、いや思い込んでる………?

 どっちにしても狂気の沙汰だな。

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