たまゆら童の笑い声(7)
注意:後半、人によっては気分が悪くなってしまうかもしれない内容が書かれていますので、お気を付けください。
「あれ? 朝……」
気が付くと空が白み始めていた。
神社の真ん中でポツンと立っていたとき、それに気づいた。
「あれ?」
さっきまで幽霊の子どもたちと遊んでいた。しかしいま、朝になる直前まで何をしていたのか思い出すことができない。
「し、ししょー……」
森の方からしずくが歩いてきて話しかけてきた。
「い、今ってなんの遊びをしていたか覚えているでござるか?」
しずくがそう訊いてきた。
そういや最初は一番怖がっていたのに、結局一番楽しいんでいる様子だったな。
「いや、あまり……」
なんでだ? ついさっきまで何かしていたはずなのに急にそれを忘れてしまった。
「……」
「ああああ! やっと見つけた!」
鳥居の方からアルノが走ってくる。
「びっくりしたよ……。朝起きたら二人ともいないんだもん!!」
「は?」
「はあああーーー。夜中の笑い声っていうのを聞くために起きていようと思ったのに……、気づいたら寝ちゃってたよ。で、起きてみたらびっくり! 家はボロボロ、村の人は誰もいなくなってるし、2人もいないしさ! でも2人の荷物はそのままあったから、ここに来てみたんだけどいてよかったよ。もー、人が悪いな2人共! 起こしてくれてもいいじゃん!」
怖さから解放されたのか、一気にまくしたててくる。
「いやいやいやいや、ちょっと待ってくれ。お前も昨晩一緒にここに来ただろ?! で、一緒にこどもたちと遊んでたじゃないか!」
「え? こどもたちってなに? 何の話……」
どうやら嘘をついている様子はない。それを見て久々にサーッと一気に血の気が引いていくのを感じた。
隣を見るとしずくも蒼い顔になっている。つまり俺だけが見せられた幻覚などではないってことだ。
「あれ? 白クン、それは?」
「え?」
指摘されて初めて気が付いたのだが、手に何かを握っていた。
取っての付いたつづらの様な箱だった。
開けてみると中には古くなったお金が結構な額入っていた。蓋の内側には
"あそんでくれてありがとう"
とこどもの文字で書かれていた。
しずくと顔を見合わせる。
「あー、えっと、報酬、のつもりか?」
「でござろうな……」
律儀なのか何なのか……。
「まあいい、で? 村がなんだって?」
「そう! 村がなんかボロボロの廃村みたいになってて! 村の人も誰一人いなくなっちゃってたの!」
「……」
もう、それは訳が分からないな……。
「はあ、結局、あいつらの遊びたいって思いだけのために、色々と謀られたってことか……?」
ただ、そんな推測をすることしかできなかった……。
まあとにかく、これで幽霊たちが満足して逝ってくれたのだったら、それでよかったのかもしれない……。
……。
で、おわり、とはならない。一つ気がかりなことがあったからだ。
「なあ、今、村に人が誰もいないんだろ?」
「う、うん。今というか、昔からいなかったみたいな様子だったよ」
「まあ、つまり、その辺も全部あの霊たちに見せられていた幻覚見たいなものだったのかなと思うんだよ」
「う、うん……」
はあ……。あまりにも気色悪すぎて、この先の推測はあまり口にしたくないし、思い浮かべたくもないんだけど……。
「だとしたらさ、昨晩食わされた物って何だと思う……?」
「………………………………え?」
「普通に料理してくれたものだったかもしれないし、そもそもあの辺も幻覚で何も食ってなかったのかもしれない。でもさ……、もしそうじゃなくて……、その……。"別の所"から持ってきたものに幻覚をかけられて食わされてたとしたら……?」
「ッ!? う"ぅッ!!」
そこまでで俺の言いたいことに思い当たったらしいしずくが口を押えながら、さらに蒼くなった森の方に駆けて行った。
「……え、本気で言ってる? それ……」
一呼吸遅れてアルノも言いたいことを理解したらしい。同じように口を押えて気分が悪そうにしている。
「さあな……。ただ……、可能性としてそれだったた嫌だなと思っただけだ」
「やめてよ、もう……」
できることなら、"そう"でないことを願うばかりだ。




