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たまゆら童の笑い声(3)

「ようこそお越しくださいました。この度は依頼をお受けいただきありがとうございます。事が事だけに受けてくれない冒険者が多く……。さすが、都の冒険者の方は勇敢ですね」


 午後4時頃、その林の中の村に着いた。

 村長と言っていた人が出迎えてくれる。昨日までデモル京に来ていたこの人がアルノに依頼をしたらしい。


「……」


 なんか目が虚ろな老人だな。

 こども笑い声とやらでかなり参っているのだろうか。


「この村には宿が無いのですが、皆様がお使いなれる家を用意しておきました。ささ、こちらで」

「あー、その前に」


 もうあと数時間で暗くなってくる頃だ。

 明るいうちにできる調査はやっておかないと。


「近くに墓地とか禁測地とか、そういう場所はあるか?」

「村の奥に古い神社がございます。あまり広くはありませんが墓地も一緒に。もう使われてはいませんが」

「そうか。そこを先に調査してきます」


 用意してくれていた寝床の場所だけ聞いて、神社の方に向かった。

 鳥居から長めの階段が見えた。

 そこから先は深い森になっている。俺たちはそこに足を踏み入れた。


「ぅぅ……。暗いでござるなぁ……」


 しずくの言うように登っていく階段は、まだ昼過ぎだというのに薄暗い。

 じめじめしていて、夏だというのにどこかうすら寒い。

 

 オオオオオオオオ―――。


 風一つないその場所はそんな静寂に満たされ、むしろうるさく感じるほどだった。

 階段を上り切ると、その神社の境内の範囲だけは流石に木が少なく、陽が差し込んでいた。


「ありゃ、神社じたいあまり使われてないのかな」


 アルノが呟く。

 そう思うのも仕方ないだろう。なにせご神木らしき一際大きな木が倒れて、お社の屋根を半壊させ乗っている。それも随分前の事のように見える。

 まともな手入れと運営がされている神社であるなら、あの状態を放ってはおかないだろう。

 お社に行く手前にあった墓地に行く。

 確かに古いものの様だ。意志に刻まれた文字が擦り切れて読めない。

 特に何かありそうな様子もなかったので、まだ中に入ることができそうだったお社の扉を開けた。


「う"……。なにこの臭い……」

「なんだこれ……」


 扉を開けた瞬間に漂ってきた強い異臭に一瞬だが強い吐き気を催し、反射的に口を塞いだ。

 祭壇らしきものの前に米をはじめとしたいくつかの食物が山盛りに置かれていた。

 すぐに扉を閉めた。


「おい、アルノ」

「ぅぅ……、言わないで」


 はぁ……、なんかヤバい村のヤバい事件に巻き込まれた、そんな気がして止まなかった。

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