夢にまで見たものを
「そんな事より刀だ。これなんかどうだ?」
「うわぁ! 綺麗な刀でござるなぁ! あ! これも綺麗でござる!」
数は少ないがどれも質はかなりの物だ。どれもよく鍛えられている。
そしてしずくは急に静かになって、一本の刀を手に取た。
「これ、不思議な感じがする……」
しずくが呟いた。軽く鞘から刀を出し眺めている。
刀身まで空のように美しく水色に輝く刀だ。
「む。それに興味を示すか」
いつの間にか近くに来ていた店主らしき人がしずくに話しかけていた。
「それは俺の最高の一振りの一つだ。その分値も張るがね」
値を見ると確かに他の刀を二、三本買える値段だ。
しずくから何かをねだるような、申し訳なさそうにするような、そんな複雑な目線を感じた。
「金は気にすんな。ナミネも少し支援してくれるらしいし、どうにでもなる」
今後しばらく普通に冒険者活動も少しは頑張らないとだな……。
「この刀は不思議な力を感じる。何使ってんだ?」
「それに気づくか。兄ちゃん出身は?」
「ちょっと複雑でね。フラエルの天帝の命でこの国に来てる、とだけ言っておくよ」
「ミファの使いか? ロンは元気にしとるか」
ロンの知り合いか? ってか、ミファの事を知ってる……?
「残念ながら死んだよ。一年近く前にな」
「……そうか」
「あんた何者なんだ」
「なに。ただのしがない刀鍛冶だ。それは塊水と呼ばれる特殊な金属を使った一振り。普通の奴にはただ高いだけの刀だが、隠しもつ力は確かなもんのはずだ」
「どうする、しずく? 一本目はそれでいいか?」
「よ、よろしいのでござるか?」
「もちろん。あと一本を選べよ」
「ふん。もう一本ご所望か、そうか。ちょっと待っておれ」
そういって店主が奥の方に戻っていった。
と思ったらすぐに刀を抱えて戻ってきた。
「これはどうだ?」
それもまた、力強い一振りの刀だった。
この独特な金属光沢は……。
「これも渾身の力作だ。最近出来上がったばかりでね」
「へぇ。そんなもん、売ってくれるのか」
「いや譲ってやる」
「え?」
譲る?
「こいつぁ、虹金鋼て特殊な金属を使った一振りでな。強力だが一般人では扱いに困る。おいそれと市場に流せるもんでもねぇ。しかし、その刀を手に取った嬢ちゃんならうまく使ってくれるだろう。倉庫に転がしとくのはもったいねぇ」
そうさっきの青い刀を指さしながら言った。
「ふーん」
しずくがもう一つの刀を手に取ってみる。
「しずく、どうする?」
「こ、こんな優れた刀ばかり、拙者などが手にしていてもいいのでござろうか……」
「気にすんな。名人は道具を選ばなくとも名人と呼ばれるが、巧くなる奴は道具に拘るもんだ。あんた師匠なんだろ。しっかり見てやりなさんな」
爺さんから背を叩かれる。
金を払って、店主に礼を言って店を出た。
「うわ、うわぁ! この重さ! この輝き! 夢にまで見た本物の刀でござる! うわぁ!」
帰り道しずくはずっとそんな調子で、買ったばかりの刀二本を抱えてくるくると嬉しそうに舞いながら歩いていた。
「はしゃぎすぎだぞ。気を付けろ」
「わかっているのでござるが! んんんん!」
欲しかったおもちゃを買ってもらった子供そのものだ。きっと、初めて夢にまで見たものを手にすることができた瞬間だったのだろう。
……こうしてみるとまだまだ子供だな。




