デモル京西のはずれでの昼下がり
「ごめんくださーい」
デモル京の外れまで行くと都感が少し薄れた、田舎と都会の中間みたいな雰囲気の街になってきた。
その一角にその寂れた店があった。
「ありゃ誰もいないのか?」
中に入っても誰もいなかった。
しかし灯りも付いてるし、締まっている様子はない。営業はしていると思うんだが……。
「……ぃらっしゃい……」
と思っていたら奥から老人が出てきた。
確かに気難しそうな人だ。
「ナミネって役人から紹介を受けてきました。刀を2振りほど購入したくて」
そういって紹介状を渡した。
「……そうか。好きに見ていきな。刀はそっちに並んでる」
「ありがとうございます」
老人はカウンターに座ってパイプを吸い始めた。
……、俺、たばこの臭い苦手なんだけどな……。なんていったら追い出されるかもだしやめておこう。
「し、師匠」
「ん?」
「そ、そのもしかしてまさかとは思うのでござるが……」
しずくが嬉しさを隠しきれずに訊いてきた。
「そうだ。まずはお前の刀を調達しないとな」
いつまでも木刀を使わせるわけにはいかない。
それに今まで文句ひとつ言わず、村の仕事の手伝いと母親の看病をし続けていたという。これくらいのご褒美があったっていいだろう。
「……!! まことにござるか?!」
「ああ。嘘つく理由ないだろ?」
「か、かたじけない!!」
思っていたより喜んでいるみたいでよかった。昔からバンドに憧れてた子どもが初めて自分のギターを買ってもらった、みたいなそんな感覚に近いのかもしれない。
しずくが俺の弟子になるってのは、かなり難しい選択だったはずだ。それを選んでくれたんだから、それを後悔ないようにしてやったかったんだけど……、どうやら正解だったみたいだな。
「まだ買ってもいないんだから、早く選ぼう」
「承知いたした!」
刀のある場所に行き眺める。
「綺麗な刀でござる! これは噂に聞く斧槍でござるな! おお! これは珍妙な形を……、どう使うのでござろうか?」
そんな風に楽しそうにしずくは店の中を眺めていた。
「これはなんでござるか? ししょー」
「鎖鎌かな」
刀以外の武器にも興味を示しているようだ。
楽器店行くと、ギター目当てで行っても、ベースとか、サックスとかいろいろと目移りしちゃうんだよな。そんな気分なのだろう。
「これは?」
「七支刀」
「あれは?」
「あー、えと、マカナかな?」
「それは?」
「モーニングスターだ」
「はえー。実用性あるのでござるか?」
「さぁ?」
RPGとかでは強かったりするのもあるけど、現実的に強いかは微妙な気がする。
少なくとも扱いに慣れるまでには時間がかかるだろう。




