エリート
「し、師匠。ここはどこでござる?」
抑えた声でしずくが訊いてきた。
大内裏の静かな雰囲気に急に不安を覚えているようだ。
「大内裏。デモル京、いやシンノミヤ国の中枢だよ」
「な、なんと……。そ、そんな場所に拙者などが入ってよいのでござろうか……?!」
「俺が許可を貰ってるんだ。その弟子が入ることに問題なんかないだろ」
「そうでござるか? なら……」
大内裏の中を歩いていき、ナミネの家に向かった。
「ここは?」
「知り合いの家だ」
「こ、これが家なのでござるか?! いやはや、都会人の住むところは凄いでござるな……」
インターホンの代わりとなっているベルを鳴らすと、中から家政婦が出てきた。
「白様でいらっしゃいましたか。白様が訪ねてきたら必ず中へ通せと仰せつかっております。今ナミネ様は取り込んでおりますので中でお待ちください」
そう言われ中に通された。
廊下を歩いていると……。
「だから! これっぽっちじゃ足らないっていってるの!」
1つの客間の中から、そんな声が聞こえた。
「何度も説明しましたが過去の事例を考えても、妥当な報酬であると判断いたしました。異論があるというのなら明確な根拠を示し、その上であなた方が妥当だと判断する額を提示していただけますか?」
どうやら2人の女生と言い争いをしているようだ。
「そうじゃなくって! 私たちは新参者のあなたのために働いてあげてもいいって言ってるのに、これっぽっちしか渡すつもりがないって、どういうつもりなのかと聞いているの!」
「話しになりませんね。階級が上の役人は必要だと判断した時、相応の報酬を支払う事で下の役人にを一時的に雇い仕事を任せることができる。シンノミヤ役員規定第六条に明記されていることです。逆に役員である期間や家系は関係いたしません。もし、そういう記述があるのであれば教えていただけますか?」
「そ、そうかもしれないけど、先輩は敬うべきでしょう?」
「先輩? 先代からせっかく最高位で役人の座を譲り受けたのにもかかわらず、大した成果もあげられないまま"新参者"に蹴落とされたサルにも劣るおまぬけが? 笑わせないでください。先輩だといいたいのであれば、もっと先輩らしくふるまっていただけますか?」
「しょうがないじゃない! 私たちは女なのよ?! もっと男たちが譲歩すべきなのよ!!」
「そうよそうよ! 私たちは名門の家の出なのよ!」
「はぁ、だからあなた方はまぬけだと言っているのです」
ナミネが立ち上がる音が聞こえた。
「いいですか?! 私は14歳で最高位になった紛れもないエリートなのです。性別。家系。そんな自分の生まれを言い訳にすることを甘えにしているような、おまぬけさん方とは、根本からできが違うのです! わかりましたか? あなた方もそんな文句を言っている時間があったら、何かの成果を上げてみなさいな」
「……」
冷徹なまでの実力主義者だな。
しかし、あの若さでこの役人の世界を生き残るには、それだけの心構えが必要だったのだろう。
「もうよろしい。あなた方以外にも伝手はあるのです。返事が変わるようで有れば、またいらっしゃいなさいな」
「な、ちょ! 待ちなさいよ!」
「賓客がいらしているのです。出て行ってくださいまし」
そういって、ナミネは2人を追い出した。




