そして内弟子に
「せ、拙者が白殿の弟子に……?」
翌朝、しずくが起きて少し経ったときにその話になった。
「ええ。白さんならきっとしずくの夢を叶える助けになってくれるでしょう。白さんは了承してくれましたよ」
「……」
しずくは困惑しているようだった。
そりゃそうだ。ただの習い事じゃない。急に家を離れることを提案されては驚くのも無理はないだろう。
「無理はするなよ。命の保証はできないから」
一応俺もその事は付け加えておく。
「え、えっと……、拙者は……」
そう目を泳がせながらしずくは母親の方を見た。
「あなたが自分で決めさい。あなたの人生を生きなさい」
そう。これはうみがしずくに与えた選択肢。
しかし与えたのはチャンスまで。この先の人生をどう送りたいのか決めるのはしずく本人だ。
14歳の子どもには酷な事だと思うが、この国ではすでに成人を迎えた大人でもある。
そういう意味では必要な事なのかもしれない。
「白殿」
「なんだ?」
今度のしずくはしっかりとこちらの目を見据えて話してくる。
「昨夜の森での白殿の剣に惚れこんだでござる。どうか、拙者をお傍に置き、その真髄をお教えいただきたい」
「……」
俺の剣ってほぼ我流だからな。ここまで言われてしまうと逆に俺が尻込みしそうになってしまった。
「ああ、まかせろ」
だが、ここまで言わせておいて断るわけにもいかない。
俺はそれを承諾したのだった。
「どうか。この子をよろしくお願いいたします」
「はい」
その言葉を交わし俺たちはこの村を後にした。
「うっわあああ……。ここがデモル京でござるかぁ……。いつも言っている街とは違い、人が多いでござるなぁ」
数日後、デモル京に着いた。
しずくは初めて東京に出てきた大学生の様な表情で、辺りを見回していた。
「さてと俺らの使ってる部屋って、あと一人くらい増えても問題ないよな?」
アルノに訊く。
「全然問題ないと思うよ」
「じゃあ、女将さんに話通しておいてくれるか?」
「もちろん。どこか行くの?」
「ああ、ちょっと用が。長旅で疲れてると思うが、もう少し付き合ってもらえるか」
しずくに訊いた。
まだ昼前だし寝るには早いだろう。
「なんの、問題ござらぬ! 拙者は既に、師匠殿の内弟子となった身故、便利に使いまわしてくだされ」
なんか張り切った声でそういった。
「いきなり重労働させる気はないよ。とある人のとこに会いに行くだけだ」
「あ、ああ。そうでござるか。でも、この街を見て回ることができるのは楽しみでござるな」
俺たちは一時アルノと別れ、大内裏に向かった。
Q.なぜ母親は普通の話し方なのに、しずくは武士言葉、ござる言葉なのか
A.かわいいから




