第3話:遺跡探検!(7)
目の前の怪物はTレックスほどのサイズでありながら四足歩行。その上で腕も持っている。機動力と攻撃力を兼ね備えた身体。恐獣、というのにふさわしいキメラだ。
その上。
「っ。かったぁ……」
刃がうまく通らないほど硬い鱗に全身が覆われている。
ジャンプして距離を取る。
が、間合いなんてものを考えられない獣は周りの水槽を破壊しながらこちらに突進してくる。
その障壁を利用し避けていきながら、魔力を両腕に込める。
「あー、もう面倒だなぁ!」
1分ほどかけて魔力を腕に溜めた。
走って逃げ回りながら、両の人差し指と中指を合わせ円を作る。
汎用魔術らしいけど、どこまで通用するかな?
「火属性魔術:バチレストっ!」
逃げながら振り向き、熱線を放つ。
視界が一瞬白く飛ぶ。すぐに目を閉じてやり過ごした。
魔術が終わって目を開けると、恐獣が目の前にいた。どうやら魔術の熱線の中を突進してきていたらしい。
避けようとしたが間に合わず、左腕に噛みつかれる。
「うああああっ!? ぐっ。火光属性魔術:バルっ!」
すぐに簡単な爆破魔術を口内で破裂させ緩んだすきに逃げ出す。
恐獣が怯んでいる隙に急いで物陰に隠れる。
「う。動かせない……。こりゃあ、神経か骨が逝ったかな……」
左腕の関節から先がピクリとも動かせなかった。
「あーもう仕方ない。ふっ! ああああああっ!」
剣で左腕の関節から先を斬り落とした。痛みは一瞬、その後まるで熱した金属を押し付けられてるみたいな暑さが痛みをかき消していった。
身体の欠損は回復魔法で再生できる。なら動かない部位がぶらぶらしていては邪魔なだけだ。
一度剣をしまい、右腕に魔力を溜める。
すぐに飛び出して魔術を放つ。
「火属性魔術:バーチっ!」
少し強めの火花を放つ。
しかし鱗に弾かれ、近くの水槽に跳ね返った。
「なーるほどね。魔術を弾いちゃうんだ。あの鱗」
強力な魔術を使える人ならどうかわからないけど、私の今の出力じゃだめそうだ。
そんな風に考えていると、またこちらに突進してきた。
助かるのはこいつが単調な攻撃しかできない点だ。
噛みつかれる直前で跳びあがり、天井を蹴り剣を突き立てた。
グサッ。
ほんの少しではあるが刺さった。
しかしその痛みのせいか恐獣が暴れだしてしまった。
「あわわっ?!」
体勢を崩し剣を突き刺したまま地面に落とされてしまった。
その痛みに悶えてるのも束の間、恐獣に踏みつぶされそうになっていた。
―――世利長愛歌の記憶領域:file.18【回復・蘇生魔法による再生と蘇生】―――
回復魔法では人体の欠損の再生や死んだ人間の蘇生も可能よ。
ただしそれには2つの条件があるの。
1つ目は心臓と脳みそが無事であること。どちらかが欠けてしまっていては再生も蘇生もできない。もちろん、心臓と脳だけは再生もできない。
2つ目は傷口が存在していること。欠損したのが昔すぎて傷口が完全に塞がってしまっていたり、生まれつきであったりすると治せない。(ルトの目はこれ故に治癒ができなかった)
また病気や老衰による死からの蘇生も不可能なの。
明日もよろしくお願いします。




