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今に目を向け、意地を張る

 デモル京の西を流れる大河。

 岩に座ってそれに足を突っ込んで、流れを感じていた。


「黄昏ちゃってどうしたの?」


 そうして川を眺めていたら愛歌がやってきた。


「やめてよ。ちょっと考え事してただけなのに恥ずかしくなってくるじゃん」

「あはは、ごめん」


 愛歌が横に座る。


「で? 何を悩んでたの?」


 はぁ……。聞かれると思った……。


「昨日の彼のこと?」

「え、なんで知って……。ああ、白の中にいたのね……」

「それもあるし、今日のさっきセオリさんのとこに行くときにも会ったでしょ」


 そうでした。

 今朝もそんなことあったな。


「あれ、もしかしてその事じゃない?」

「いや、それもあるかも」

「も?」

「なんかもうわかんなくなってきちゃった。頭がオーバーフロー気味というか。愛歌みたいに要領よくないからさ」

「私はやりたくないことは最低限で切っちゃうだけなんだけど」

「それを要領がいいって言うんでしょ?」


 はあ、私もAIにしてもらえば楽になるのかなぁ。


「私と能力が似てるって言ってたでしょ、セオリさん」

「うん」

「平行世界の自分から未来を視れるって」

「うん……。え?」


 愛歌はすぐに言いたいことがわかったらしい。


「じゃあ、夜空もそれができるってこと?」

「できるって言っても、夢の中だけ。制御はできないし、ただの夢って可能性もある」

「正夢になったことは?」

「一度だけ。トナクノイド大陸の契約の石を探したとき、その場所が道のりも、道中の危険な場所も含めて正確に一緒だった」

「偶然にしては、出来過ぎってわけか」

「うん」

「で? 最近、また何か見たってわけ?」


 本当に愛歌には敵わないな。


「私の腕の中でセオリさんが死んでいく夢をみた」

「……」


 未だに、あの血の感覚が脳裏によぎる。


「私が殺したのか、誰かに殺されたのか、それはわからないんだけど……、会話から私たちは子弟になっているみたいだった。きっとあの人の弟子になってしまえばあの未来にたどり着く」

「かもね」


 私が見たのはきっと近い平行世界の自分だ。

 だから、確定的な未来を見たわけではない。


「強くはなりたいよ。あの人の所で学べばきっともっと強くなれる。でも、怖い」

「うん……」

「だから、どうすべきなのか。一度、考えたいなって」


 でも考えて答えが出せるほど簡単に決意を固められる人間じゃあないし、強くもない。


「愛歌ならこういう時、どうする?」

「私かぁ……」


 愛歌は少し考えた後言葉を続ける。


「答えとは少し違うかもだけどね。私はどんな選択肢を選んだとこで公開すると思ってる。人間って欲張りだからね。どんなにいい未来を引けたところで、あの時こうしてればもっと良かったんじゃあないか、なんて、あとから思ってしまう」


 それはそうかも……。


「だから二つの事が大事だって思ってる。1つは、今持ってる幸せに目を向けしっかり享受する事。いつそれがなくなるかわかったものじゃないからね。幸せは持っているうちに味わっておかないと。2つ目は、その選択は正しいものだったんだって抗うこと、意地を張ること。その選択を正解に自らすること。だと思うな」

「あははは。難しいね」

「うん。どっちもは難しいよ。でもどちらかができれば、かなり楽になるんじゃあないかな、って思うよ」

「……そっか……」

「私は応援することしかできないけどさ、頑張って」

「うんありがとう」


 少しだけ楽に考えられるようになってよかったなと思った。

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