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少し考えさせてください

「まあいいや。最悪お前が敵に回ったとして、その時は俺勝てねぇだろうし。そんときゃそん時か」


 白が言った。

 いや、私は嫌だけどね。


「とりあえず、しばらくは冒険者としてその子供の、誘拐事件? 失踪事件か。を調査すればいいんだな?」

「そうなりますね。お願いします。必要かはわかりませんが、大内裏の中の図書資料館は解放しましょう。お好きに使ってください」

「愛歌」

「はいはい。だろうと思いましたよ。じゃあ行ってくるわね」

「まかせた」


 愛歌は渋々という感じで出ていった。

 愛歌なら本を通り抜けるだけで内容を自身の記憶域(ストレージ)コピペできる。じゃあ何が不満なのかっていうと、それをデータベースに内容を整理して保管するという作業に時間と体力を使うからだそうだ。

 一度AIになってからその特性を持ったまま霊体になった。とはいえ、意志は人間のままだから本当のAIと比べると、少し制限がかかる。その整理の作業は結構脳にくるのだとか。

 だからちょっと面倒くさいみたい。

 愛歌を見送りながらそんな話を愛歌としたのを思い出していた。


「さてそうと決まれば俺らもさっさと準備をしないとな」


 そう白が言って立ち上がった。

 私もそれに続く。


「そうだ夜空さん。一つ提案が」


 しかし、立ち上がったところで止められた。


「はい?」

「時間が許す限りにはなりますが……、私の弟子になりませんか?」

「……はい?」


 弟子?


「あなたは今、近接戦には苦手意識があるのではにないですか?」

「……まあどちらかといえば」


 魔術戦の方が得意だとは思ってるけど。


「あなたの刀は筋がいい。合った型を与えてあげるだけで、化けることができるでしょう。それにあなたの魂源と私の魂源には近いものがある。より高みを目指してみませんか?」


 ……。

 本来なら断る理由はないんだろう。

 でも……。


『こうなる気はしていたのです。どれだけ未来を見てもこれより先はいつも暗闇に包まれていましたから』


 昨晩見た夢を思い出す。

 その上で、セオリさんは平行世界の自分を見ることで未来を予測できるといっていた。

 もしその能力まで似ていて、火山の時のあれも、昨晩のあれもそういう現象なんだとしたら……?

 あの夢でなぜセオリさんが亡くなったのかわからないけど、もし何かしらの出来事があってセオリさんが敵になってしまって、殺さざるを得ない状況だった、とかだったら……?

 今日の会話からそんな結論に至ってしまい、背筋に寒気が走った。


「少し、考えさせてください……」


 私はそう答えた。

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