大内裏にて
翌朝。
ふう。まあ昨晩色々あったけれども? わたしが好きなのは白だし。
そもそも元の世界に帰らなきゃいけない身でさ、ここの世界で婚姻とか……。
いや、そもそもその白がそれをしてるわけで……、それを否定するのはちょっと気が引けますけれども……。
とにかく! 白にあれを見られてようが! 私自身が変わるわけじゃないし! 普通にいつも通り接すればいいだけ……。
などと、頭の中でぐるぐると考えながら、目を開けて布団の中から体を起こした。
「あ、おはよ」
本を読んでいたアルノがそう声を掛けてきた。
他のみんなはいないみたいだ。
「おはよ。あれ? 私、寝坊した?」
「ううん。白クンは朝風呂だってさ。愛歌とノアチャンは散歩」
みんな朝強いな……。
「ただいま」
なんて考えてたら白が帰ってきた。
しかし。
「え? もしかして外のお風呂行ってきたの?」
この宿の浴場があるところとは、別の方から入ってきたように見えた。
「ああ」
「……っ! ヘンタイ!」
「は、はあぁ?!」
「混浴に入りたくて行ってきたんでしょ!」
「ちげーわバカ。ただ久しぶり広い風呂入りたかっただけだよ」
「ここの大浴場だって十分広いでしょ?」
「いや、そうじゃなくて、スーパー銭湯みたいに広かったし、楽しめたぞ?」
「そんなこと言って……」
「そもそも誰もいなかったし」
そういう問題じゃ……。
「まあまあ、夜空チャンの気持ちもわかるけどさ。ボクが言っちゃうのもなんだけど、男一人……、に近いようなものでしょ? 少しくらい羽伸ばさせてあげなよ」
「まあ、アルノがいうなら……」
私だってそれは思うけどさ。
ちょっと納得いかない……。
「とにかく、手紙が届いてたぞ」
「手紙?」
白が部屋に入ってきながら言った。
「ああ。セオリからだ。手紙ってより、招待状だな。また今日の昼過ぎ辺りに会いに来いってさ」
あー、そっか。そうだったね。
今日も会いに行かないとだったんだよね。
「じゃあ、お昼ご飯にラーメン食べに行きましょうよ。この世界のものが気になっていたのよね」
ノアちゃんと共に帰ってきた愛歌が白の後ろから行った。
「お、いいな。久しぶりに食べたいよ」
「え? みんなの世界にも同じ食べ物があったの?」
アルノが訊く。
「あー、食文化は結構似てるかな、俺らの故郷と」
食文化以外も似てるんですけどね。まあいいか。それ言っちゃうと説明が長くなりそうだし。
お昼を食べて、大内裏を歩いていた時の事。
「あ、夜空さん!」
「え……」
セキヤミさんが私を見つけ歩いてきた。
なんで……、と思ったがそりゃそうか。セキヤミさんの職場だろうし……。
けど、今は余計にタイミングが……。
「昨晩の事お考えいただけたのですか?」
「い、いや、今日はセオリさんから呼び出され……」
「なんと! それは失礼いたしました。ごめんなさい。急かすようなことを行ってしまって……」
「い、いえ……、別に……」
……どうしよ。
昼に改めてみると正直、セキヤミさんの顔がよすぎる……。
って、いやいや、何を考えて……。
「なーに? あなたが言っていた求婚相手ってその芋女なの?」
「へ?」
今度はナミネちゃんがやってきた。そっか2人は同僚か……。
「ナミネさん。あなたが素敵な女性であることは認めますが、その物言いは夜空さんに失礼ですよ」
「あらごめんなさい。なら私はこの人を貰おうかしら」
そういって、白の腕を取った。
「いや、俺は……」
「ちょっと何してんの!」
私が睨むとナミネちゃんはいたずらっぽく笑った。
「あらごめんなさい。どうやらそちらの夜空とかいう女性は、こっちの人の方を好きみたいよ? 残念ねセキヤミ」
「夜空さんが誰を想っていようと、今私が想っていることも変わりはありませんから」
「よかったね、夜空ちゃん。白なんか置いといて乗り換えちゃえば?」
愛歌が楽しそうに耳打ちしてくる。
乗り換えるって、どっちにも行っていませんが……。
あー、もう、なんでこんなことになってるのかなぁ?!




