天流 瀬織(あまはや せおり)
キーンっ。
少し待っていると頭痛に似た何か、嫌な感覚がした。
「痛っ」
「どうかした?」
となりの愛歌が訊いてくれる。
しかし、その感じはすぐに消えていた。
「うーん、わっかんない……」
なんだったんだろ。
「確かに、ちょっと……、変なにおいするかもな」
白が言った。
「え? そう?」
御香のいい香りしかしないけど……。
そんな会話をしていた時だった。
「遠い世界を知らぬ君
明日の声に導かれ
今日を歩いた選ばれし者
ぐるりぐるりと巡り逢い
巡り巡られ妖しく光る
紅の花が希望と咲くまで」
部屋に入ってきたのは豪華な和服を着た女性だった。詠い終わるころには目の前に座っていた。背が2m以上はあり、顔立ちは整っている。肌は少し赤みがかかっており、結われた長い髪は銀色に輝いていた。
聞いていた年齢にしては、数千ほど若く見える。20後半から30代といった感じだ。
隠しているようだけど、それでもこうして目の前にいるだけで体が震えてしまうほどに強い魔力とオーラを感じた。
そして最大の特徴は、額に真っ直ぐに伸びた角が二本、生えていることだ。
「夜叉鬼……?!」
「ええ。当たりですよ。夜空さん。私は物怪隠です」
「さっきの詩は?」
「この国では挨拶やその他色々な時に詩を送る風習があるのです。私は苦手ですので少し出来は悪いですね、申し訳ありません」
そんなことなかったと思うけど。
「さて、まずはかつて物怪隠の族長だった者として、お礼を申し上げておきましょうか。わが一族の行いを止めてくださりありがとうございます」
「あ、マールズのこと? 何で知ってるの?」
「私の眼は来し方、行く末、そして、現の全てを見通します。先の事は変わってしまうばかりですが」
「へぇ……」
かつて族長だった?
「さて、では改めて……、ん?」
「どうかなさいましたか?」
おつきの人が訊いた。
「何か……、いえ気のせいですかね」
そういってこっちに向きなおした。
「さて、私の名は瀬織、天流 瀬織。数千年前にとある戦いの結果魔界より追放され、今はこのアマノクの地にて神子天皇として政を行っております」
「じゃあ、あなた……」
珍しくノアちゃんが声を出した。
その顔は複雑そうな顔をしている。
「どうした? ノア」
「……ううん。何でもない」
どうしたんだろう。
「それで俺たちは何をすればいい」
「それについては明日お話ししましょう」
「? 契約の石を探すんじゃないのか?」
……私もそうだと、思ってたんだけど……?
「契約の石は、すでに発見しております」
……え?




