シンノミヤ国の中央都市デモル京
恐獣が引く車に揺られ気分の悪さに耐える。
このアマノク大陸はフラエル皇国のウィンダルフ大陸の時と同じように、魔霧に覆われていた。
クレルラル王国の時はなかったから、ウィンダルフ大陸だけなのかと思っていたんだけど、クレルラル王国の方が例外だったぽい? たぶんあっちでは政府の中枢にまで正義の弾丸軍が鑑賞していたから必要なかったんだろう。
つまりアマノク大陸を支配するシンノミヤ国はその心配はあまりしなくてよさそうだ。
とはいえ、やはり気分の悪いものは悪く……。
「お"え"ぇ"……」
やはり一番影響を受けているのは愛歌で、せっかくの美貌も美声も台無しなほど酷いありさまでえずいている。2、3日ずっとあんな調子だ。
「前も言ったけどさ、そんな苦しいなら、俺の中にいればいいだろ?」
「あなたこそしつこいわね……。みんなと話したいんだって言ってるでしょ……。仲間外れはやなの……」
「だから、そんな様子じゃあ話なんかできてないだろ?」
いつも通り二人は言い合いをしている。
「あれ?」
しかしある瞬間を境に急に気分の悪さが消える。
そして、ドアが開いた。
「みんなデモル京に着いたよ!」
アルノが言った。
降りてみるとそこは丘の上だった。北の方を見ると眼下に巨大な街が広がっている。
「作文用紙みたい……」
その町は縦横綺麗に区画が分けられている。
「さ、行こう」
街に歩いていって手続きをして中に入る。
その街並みは新鮮ながらわびさびといいますか、懐かしさを感じた。
「あのさ、これって」
「ああ、歴史の教科書って感じ」
平安京とか平城京とか……、正直その二つの違いなんてわかってないんだけど。でも行ってしまうとそう言うのにちかい街並みだった。
商店街となっている中央の大通りを行きかう人も和装を着ていて、本当に時代劇の中に入り込んでしまった気分だ。
「へいらっしゃい! 焼きたての団子、3本で12フルね!」
「新聞! 号外だよ号外! こんどは西で失踪事件だってさ!」
「失礼。その香の物は、どこのもので?」
「そうか、じゃあ使いの者を立てて、あとで家に送るよ。お住まいは?」
「……。時代観わからなくなってくるな」
白が呟く。
そう。あまり時代劇とか歴史に詳しくなくても、日本人ならわかるほどに、色んな日本の時代がごちゃ混ぜになったような街だった。
茶屋は江戸風だし、八百屋は昭和、新聞を配ってる人は明治っぽいし、この商店街からみえる民家やそれを囲う塀などは平安っぽかった。公園? には高床式倉庫や竪穴式住居っぽい建物まで見える。
人々の服は確かに和装だけど、十二単っぽいのとか、侍っぽいのとか、昭和っぽいのとかいろいろある。
「やっぱり不思議だよね。この雰囲気を味わいたいためにクレルラル……、じゃなかった、リトラルトからもたくさん人が来るんだよ」
アルノは私たちに共感したようにそんな事を言ってくれるが、アルノの場合はどちらかというと外国人観光客的な感覚に近いと思う。
私たちはなんていうか……、懐かしさの中に、竹取物語と平家物語、坊ちゃんにサザ○さん、そんな作品をぎゅっと1つにごちゃ混ぜにしてしまったみたいな、そんな奇妙さを覚えていた。




