VSマールズ(2)
脇腹を刺されたのち、胸部を強く蹴られる。
体が吹き飛んだ。
「くっ。ゲホッ、ゲホッ!」
何とか受け身を取って着地し態勢を立て直した。
回復魔法で応急処置をし、体が動くようにする。
「ふん。威勢のいいことを言っていたわりにその程度ですか。剣の腕もそこそこでしたしね。やれやれ、失敗作の仲間は無能のというわけですか」
「無能、無能ねぇ」
口の中に溜まった血を地面に吐き出した。
その後で口元を拭う。
「ま、私は実際そうかもね。お世辞にも有能だとか頭がいいだとか、強いだとか言い難い人間だとは思うよ。けどね、少なくとも……」
魔法を唱えた。
地面が生物の様にうねり始め、手の様に動き、マールズの脚と腕を捕まえた。
「アルノは、失敗作なんかじゃあないっ!!」
その後両手で刀を構えて切りかかる。
けど、すぐに岩を壊されて、受け止められてしまった。
「アルノは、あんたなんかよりずっと、誰よりもずっと、全てに、そして自分に正直に、今を一生懸命に生きている!」
もう一度魔法陣内を周回し、魔力を溜め込む。
「嫌いな自分を変えようと! 愛せる自分になろうと!」
そこを捕らえられて、槍で突かれそうになる。
ギリギリ受け止めた。
「そのせいで自分が苦しい状況に置かれても! それでも、もがいて足掻いて、必死で生きてるの! それが、アルノなの!」
それを、押し返して刀で反撃した。
「それを……、あんたみたいなゴミが! ゴキブリにも劣るような害虫が!」
その反撃はもちろん、受け止められる。
「誰の許可があって、失敗作呼ばわりしてんの! いい加減にしてっ!」
一度下がって、もう一度切りかかった。
「私は母親! 許可はいりません。親が子供をどうしようと、勝手でしょう!」
が、マーズの上手い槍さばきで、刀をどこかに弾かれてしまった。
無防備になった私の心臓を貫こうと真っ直ぐ槍が向かってくるあ
「いいわけないでしょーがぁあああああ!」
「がっ、はぁッ?!」
闘気力を使って瞬時に回り込み、同じく闘気力で自身の手に手繰り寄せた刀で背中を裂いた。
(はじめて闘気力が出た……。これが……、私の魂源、座標……?)
自身の認識している座標への瞬間移動。それがその魂源を使って今できた事みたいだ。
(グイラの言っていた私の魂源。あれは正しかったってわけか)
などと頭の中では冷静に考えるが、怒りはまだ消えていなかった。
その後もマールズめがけて刀を振り続ける。
「あんたの方が! 消えろ! この害虫が!」
背中への攻撃でかなりのダメージを負ったらしいマールズは私の連撃を受け流す者の、前ほどの力はなかった。
そして。
「ぁぁぁ……」
致命傷を与えることに成功する。
「夜空ちゃん! 待って!」
その様子を見ていたアルノが近くにまで駆け寄ってきた。
「ごめん、アルノ」
こいつは最低な奴だけど、きっとアルノにとっては、この世にもう、一人しかいない大切な肉親の一人なんだと思う。お父さんはあのロボットの中で死んじゃったと思うから。
こんなことになってしまっても、まだ、愛している大切な家族なんだと思う。
急にこんなことになって頭が混乱していると思う。
それでも私は、ううん、それだからこそ私は。
「こいつを殺す」
そういって、刀を振り上げた。




