父子喧嘩
アルノは王である父に詰め寄る。
「何が訊きたい?」
「何を? 全部だよ。なんで、急にリラル族に対する態度を変えたのか。なんでミアさんを殺したのか? なんで正義の弾丸軍なんかと組んでいるのかっ!! ……全部だよ。わかるでしょ? 今はみんな戦ってるから誰も聞いてない」
「……」
「教えてよ。ボクたちは今まで、ちゃんと話し合ってこなかった。親子なのに……。だから、あんたの真意が聞きたいんだよ」
アルノはまっすぐ目を見た。
「……」
そして観念したかのように王は話始める。
「生きているのだ」
「え?」
「お前の母は生きている」
「……え?」
同じ返事をしてしまったが、一度目と二度目では意味が全く異なった。
「母上が?」
「そう。あの移動車で帰っていた日。突如何者かに襲われた。それがあの5人組だ。そして、今も人質に取られている」
「……そう。だから、全部言われてやったことだってこと?」
「そうだ。わかってくれるか?」
「……。うん、まあ、疑問は解決したかな」
アルノはきびすを返し、夜空たちの方に歩き始めた。
「なら、あいつらを止めてくれ! 石とあいつらを差し出さなくては、アルアが殺されてしまう」
「……残念だけど」
一息置いて話始める。
「母上のことについてまで、考えている時間はない。世界の危機なんだ。王になろうとしている者として、どちらを優先すべきかは火を見るよりも明らかだよ」
「待て!」
「正直、失望したよ。もっと何か深いお考えがあるのかと思っていたのですが、"ノスラ王"」
「……お前は母を失ってもどうも思わないのか?」
王はノルアの肩を掴む。
「嫌だよ。嫌に決まってるじゃん。でもだからなに? 今夜、日付が変わったときには、リラル族が奇襲をかけにくるよ、あんたを殺しにね。それが成功したら、きっと大きな戦争になってたと思う。そうでなくても、多くの人が死ぬ。こいつら……、正義の弾丸軍が何を目的にそんな死を振りまきたいのかはわからないけど、最悪この国の崩壊すら狙っている可能性がある。それを見過ごしてまで母を取れるほど、ボクの肝は据わってないよ。申し訳ないけど」
「……」
「巻き込まれたくないなら、そこに座ってて」
それだけ吐き捨て、アルノは夜空の下に向かった。
*
「夜空チャン!」
ノアちゃんの邪魔にならないよう魔術で援護していた時、アルノがこちらに走ってきた。
「話はいいの?」
「いいよ、もう。あんな人」
ちょっと怒った声色だったな。何かあったかな?
「それより、なんだろう……」
アルノが何かを考え込むように、フードの奴を見つめている。
「どうしたの?」
「いや、違和感……、じゃないか。なんかあの槍遣いに覚えがある、気がするんだよね。それが、すごく大事なことな気がするんだけど……」
「え? なんだろう」
ノアちゃんがあのフードには認識阻害の魔法が掛けられているといっていた。
その重要な何かすら、認識できないようになっているんだろう。
厄介だな。




