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アルノ青年期(1)

―――7年前・アルノ16歳


 その日はクレルラル王ノスラ、アルア、アルノの三人でレインズに赴いていた。

 当時ノスラはリラル族とクレイ族との間にあった確執を解こうとしていた。それもあり、この頃は今ほどリラル族のクレイ族に対する嫌悪感は、少しは薄れていた時期だった


「ノル王子は美少年になられましたな」


 この日はレインズでリラル族の族長の家族との会食だった。


「あはは、ありがとうございます」


 リラル族の長、ティーマはいい人だ。アルノにも息子同然のように接してくれる。

 ただ、美少年と言われることには複雑な感情を抱いてしまうのもまた事実だった。


 会食が終わり、レインズの町を眺めていた。

 レインズの町は美しい。

 森と人とが調和して作り出した町。この世界の中でも最も美しい街の1つだろう。


「アルノ様。横、いいですか?」

 

 レインズの長の娘、ミアが声をかけてきた。


「ええ。もちろん」


 彼女はアルノの許嫁だった。健康的に美しく光る水色の肌の可愛らしい女の子だ。


「レインズはどうですか?」

「何度来ても美しい街だなと思います」

「クレルラルも美しいじゃないですか」

「クレルラルは……、ここと違って冷たい感じがするから」


 あの町は人だけが充満している。ここは自然の温かみも感じることが美しいと感じるのだ。


「普段は何をされているのですか? えーっと、何か、趣味とか」

「趣味……」


 思い浮かぶものを言えば、幻滅されてしまうかもしれない。


「槍術と乗馬を嗜んでいます」

「へぇ! かっこいいですね!」

「そ、そうかな……」


 まあ、嘘ではないよね、何て想いながらそう言った。


「私たち許嫁同士なのに、お互いの事ほとんど知りませんね」

「政略結婚なんて、どこもそんな感じかもしれませんけど」

「ふふ。そうかもしれません」


 レインズの木々の間に浮く灯を眺める。


「ではこれから、お互いの事を知っていく楽しみがあるということですね」

「じゃあ、今はお互いの事を聞くのは、やめにしましょうか?」

「うふふ。それもいいかもしれませんね」


 その星に囲まれていたような空間で、お互い笑い合っていた。

 アルノは自身の(さが)故に自身から恋愛を積極的にする気にはなれなかった。

 故に勝手に配偶者をあてがってくれるならありがたいという思いもあったが、この人を愛せるように努力しようとこの頃は思っていたのもまた事実だった。


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