クレルラル城へ
クラウノの東から徒歩5分クレルラル城前に立っていた。
フェイサートが城門で何か手続きを終え戻ってくる。
そこから深い渓谷を超えるための大橋を歩いていた。
「これ上手くいくんだよね?」
なんども確認したことだけど、不安になってもう一度アルノに訊く。
「うん、たぶん。フェイサート次第ではあるんだけど」
「こいつを信頼しろってちょっと無理があるんだけど」
「安心しろ。金さえ受け取れればその分の働きはしてやる」
「そりゃあんたはそう言うだろうけど」
今回の場合作戦の都合上、報酬は先払いになっちゃうからさ。それだけ受け取ってトンズラ、なんてことをされちゃうんじゃあ、って心配なんだよね。
「まあ、もう言っても仕方ないよ。こんなものつけて、ここまで来ちゃったんだから」
そう、私たちは今フェイサート以外は死神の枷を着けていた。魔力や気力を吸い取らずに抑えつけるだけのモードで。
あとでフェイサートとの通信で遠隔で外してもらえるようにはしているんだけど、裏切られてしまったらたちはそのままお終いだ。
橋を渡り切ったところでフェイサートから担当の兵士に引き渡される。
そして赤外線やら何やらで本人確認をされて……。
「よし照合が取れた。全員本物で間違いないな。拘束具も問題なしだ」
そりゃあ、そうだ。
半ば出頭してるみたいなもんなんだから。
「報酬は今事前連絡で送られてきていた口座に振り込んでおいたぞ」
「少し待て……。ああ、問題ない」
兵士とフェイサートが会話する。
これが、フェイサートに用意した報酬だ。
まさか自分たちが賞金首であることを利用する羽目になるとはね。
「では、引き渡したぞ」
「ご協力感謝する」
フェイサートは踵を返しまた大橋を歩いて行った。
「アルノ王子」
「なに?」
フェイサートがいなくなった途端、兵士の人がアルノに話しかけた。
先ほどまでの事務的なものから少し砕けた口調に変わっている。
「王がお会いになりたいと申しております」
「…………いいよ。こっちも言ってやりたいことがボクに懸かってた賞金ぐらいあるから」
城に連れていかれ途中でアルノとは別れることになった。
「じゃあね、2人とも」
「うん」
「ん」
私とノアちゃんは大きく華美な廊下を兵士4人に囲まれて歩いていた。そして……。
ガシャン。ガラガラ……。
突如兵士のうち一人が、天井から降ってきた何者かによって倒された。




