魔界ノ契リ
敵は5人、逃げ場なんてない。
どうしたらいい……、なんて考えている間に。
ヒュオッ!!
ノアちゃんが弾丸の様に飛び出していく。
しかし。
「へ?」
数秒後、ノアちゃんの体は壁に強く叩きつけられていた。
「ノアちゃん?!」
「愚かだな。疑似超人の身で我々、に向かってくるとは」
「……?」
ノアちゃんがあんなに簡単に一方的にやられちゃうなんて……。
あ、そうだ。アバスさんのとこで、魔界の生物とは戦えないとかなんとか。
「魔界ノ契リ」
「?」
青い服の一際身長の高い奴が呟いた。
「解せないという顔だったので説明してやろうと思ってな」
「そりゃどうも」
「我々魔界の生物には魔界ノ契リと呼ばれるものを強制契約させられる。これは約4500年前のある事件からずっと続いているものでな」
「それがなに?」
「魔界の生物はその種族ごとに位階がある。例えばリーダー、エレメンタルレッドの様な純悪魔であれば最上位種。イエローの吸血鬼や私、ブルーの凍霜魔は上位種。パープルの様な妖淫魔や、グリーンの石眼魔は中上位種。そして疑似超人は最下位種の生物だ。その位階は肉体に刻まれた絶対的な物で、下位になればなるほどに上位の者との戦闘行為をする際に体に制限がかかる」
「そこの疑似超人は一人でも我々を圧倒できるだけの力を持っていたのだろうが、軽くあしらってやっただけでこのザマだ」
「卑怯だ……」
「卑怯? 例えば蟻は、人間サイズになれば人間など軽くひねれるほどの力を持っている。しかし、蟻は人間を超えることはできない。これが生物の生まれ持った物の差だ。卑怯というのはお門違いというわけだ」
「……」
あーもう、文句言ってる場合じゃないよね。
どうする? ノアちゃんはダウン。戦えるのは私とアルノの2人だけ。
まあ、やるだけやるしか。
「ないよね!」
脚力を多段強化し、一気に距離を詰める。
後の事は戦いながら考える。
レッドとかいうのに斬りかかった。かがんで避けられたがその背中を踏み台にして跳ぶ。その勢いでそいつを蹴り飛ばした。
「貴様!」
ブルーの氷属性魔術を火属性魔術で相殺し、風属性魔術で吹き飛ばした。
(緑のやつはメデューサって言ってたっけ)
土属性魔術で泥を作成し、グリーンの目に飛ばした。
(これで目は使えない)
その隙に腕を落とし、突き飛ばした。
天井から降ってきて背中に張り付いてきたイエローに、首筋を嚙まれる前に、爆発の魔術を引き起こして、引きはがした。
霊力の危険信号を感知し体をそらすと、さっきまで私の体が合った場所を紫色の槍が貫いていた。
それを刀で叩き落して、後ろ回し蹴りで腹部を攻撃した。
(こいつら、あの死神とかライグとかトリカとか、あんなの程の強敵じゃない!)
上手く立ち回れば勝てない相手じゃないぞ。




