前の世界での白って……?
「夜空チャン、起きてー」
「んーーーー」
「どうしたの? 今日はやけに寝坊助さんだね」
「えーーー、っと……」
目を開けるとなんか見覚えのある景色だった。
でもそこにいたのはアルノだ。なんだか安心した。
「ふわぁ……、おはよ……」
「おはよう。じゃあ、朝の準備してて。ご飯はノアちゃんがやってくれてるから、私はそれまでの間に、ボクは少し調査してくるね」
「いってらっしゃい……」
アルノを見送ってから頭が覚醒し始める。
「さっきのは夢……? それとも……」
あまりにも生々しく、リアルな夢だった。
触れたものの感触までしっかりと覚えている。
(え、ここに白が現れてほしいって思うくらい、私白のこと好きなの?)
ていやいや、そういうレベルの夢じゃなかったと思うけど。
とにかくあれが夢かどうか確かめる方法が一つある。
「おはよう」
「ん」
朝食の準備をしてくれているノアちゃんの所に行った。
「ノアちゃん、聞きたいことあるんだけど」
「なに?」
「キーセルさんとヴィナさんって人知ってる?」
カタっ。……カチャ、カタカタカタ……。
ノアちゃんは少し動きを止め、また準備を開始した。
一瞬だったけど明らかに動揺していた。ノアちゃんのそんな様子は珍しい。
「なんで夜空がその名前を知ってるの?」
手を動かしながら訊いてきた。
「えっと、信じてもらえるかわからないけど……、夢で会って……」
「夢? ああ、あなたの魂の色ならあり得るか」
魂の色?
「夢を通して別世界線を垣間見ていたんでしょ」
「うん、そんなとこ」
やっぱあれって平行世界とか別時間軸みたいなやつなのかな?
「2人とも白の仲間だった」
「だった?」
てっきりこの私たちの世界線では白についてこないことを選択したとかかと思ってたけど。
いや、それでも"だった"とは表現できるけど、もう少し含みを感じた。
「キーセルは白が殺した」
「……え?」
「ヴィナはその事がきっかけで白と決別した」
「……」
あんなに……。
「仲良さそうに見えた? あなたが見てきた世界では」
「う、うん……」
「それは実際正しい。特に白とキーセルは親友といえる仲だった」
「じゃあなんで……」
「色々あったから。私からは口にしないでおく」
……えぇ……。
「ただいまー。良い匂いしてるね。……え? どうしたの?」
帰ってきたアルノが空気を察して動揺する。
「あはは、ごめん、なんでもない。気にしないで」
「う、うん」
はあ、一体、何があったんだろ……。
あんなに仲良さそうだった仲間を殺さなきゃいけないことがあったと思ったら、婚約者も見つけてるわけでしょ?
いったい何があったんだろ、前の世界では。




