第3話:遺跡探検!(2)
翌日私たちは遺跡の小さな通路を這って進んでいた。
世界大戦期の国民シェルターなのだそうで、中は街として数百人が暮らせるだけの広さと機能を有している。
そのため頻繁に出入りする必要がない、と判断されたのか、入り口があまりにも狭い。
「ちょっと! あんまり、近づかないでよ! 足にかかってる、息!」
「悪かったって」
本当は白が前を進むはずだったんだけど、ちょっとトラブって私が転げ落ちてしまった。
もう一度地上に出て入れ替わるのも面倒だったために私が前を進むことになったんだ。
「いいけどさ。あんまりスカート見ないでよ」
何が問題って、今日スカートなんだ。
冒険者用だし、インナーを履いているし、幼馴染相手だしもうどうだっていいんだけどさ。
やっぱあんましいい気しないし、あんま近づかれると流石にちょっと恥ずかしい。
「どうだっていいだろそんなこと。ちゃんと前見ろ」
「そんなことってなに?! 清らかな乙女のパンツを何だと思って、わっ!」
通路が急に途切れ、広い空間に出たみたいだ。
「なーにが乙女だ、いわんこっちゃない」
白が上の方から声をかけてきた。
「いったぁー……」
「だから言ったろ」
白が呆れたように言いながら降りてきた。
「暗いから見えなかったの!」
「ちょっと待ってろ」
白が両手を胸の前に重ねる。
ぶつぶつと呪文を唱えた。
「光属性魔法:小太陽」
魔術を唱えると、重ねていた手の中から丸い光が出てきた。それを放ると空中に浮きはじめる。
周囲がはっきりと見え始める。
私たちはあらかじめ貰っていた遺跡の地図を使って少しづつ調査を進めていた。
そして……。
「な、なんだったの今の……」
「まあ、無理に名付けるなら、……ケルベロスか?」
三つの頭のある犬……、というより虎の様な魔獣3匹が私たちを襲ってきた。
一匹を私が、その他を白が倒した。
「こんなのってあり得るの?」
「だから、これが異常なんだろ」
そっか。
あまりにも異形の生物だったから、驚いてしまった。
「いやいや、だとしてもじゃない?!」
そもそも同じ体についていた頭それぞれが似て非なる種の物に見えた。
えーっと言葉にするなら……、なんだっけ?
「キメラみたい、っていいたいのか?」
「そう! それ!」
「だとしたらそんなのを作り出してるやつがいるってことだろ?」
まあ、そうなるかも……。
はあ……、またヤバイことに巻き込まれちゃうのか……。
―――世利長愛歌の記憶領域:file.16【世界大戦期】―――
約1500年前から1000年前の間、世界規模で戦争が行われていた期間を指すの。
その期間を経て、世界の国境はほぼ現在と同じものとなったようね。
きっかけはエルフの大陸、つまり今私たちがいる大陸とエルフを見つけた人間による侵略戦争。
エルフたちは大陸各地に種族ごとに散り散りになってしまっていた。
1200年前、後に天帝となるエルリフィがエルフを纏め上げ、現在のフラエル皇国を興す。
しかし戦争が終わって以後も人間にとらわれたエルフが身売りさせられていた記録が残っているわ。
そういった戦争の傷跡はいまだに残り、人間を忌避するエルフもいるようね。
明日もよろしくお願いします。




