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背水の陣

「ちょっとそこの嬢ちゃんたち」


 悩んでいた時男性に話しかけられた。

 30後半くらいだろうか。スーツをピシッと着込んだ気品のある紳士的な男性といった様子だ。

 香水の中にほんのりワインの香りがした。


「えーっと何の用でしょう」


 経験上、第一印象がこういう風によさげな人にはいい人が少ない。特にこういう場では。

 いや、それって第一印象が悪いっていうのかな?

 まあとにかくそれ故に警戒しながら訊いた。


「今の様子を察するにお金に困っているんじゃあないかな?」

「…………」

「そう警戒しないでくれ。君たちに言い方法を教えてあげようと思っているだけなんだから」

「いい方法?」


 胡散臭いというか、警戒するなって方が無理でしょ。


「その前に君たちはいくら必要なんだい?」

「……」


 目くばせをする。

 ノアちゃんが、まあ、いいんじゃない、という風に頷いた。


「大体100万フルくらい」

「100万フルか……。今の手元にはどれくらい?」

「前途多難って感じですね」


 そちらの方は一応具体的な数字を避けた。


「そうか、なら……、おじさんとゲームをしないかい?」

「ゲーム?」


 うわあ、アニメとかだと、あんまりいい展開になったのみたことないよ、この状況。


「そうクロノスペクトル。1on1のカードゲームだ。もし勝ったら100万フルをあげよう」

「で? 負けたら?」

「100万フル分、私が経営する売春宿で稼げるまで働いてもらおうかな。3人合計で良しとしよう」


 ……はぁ……、やっぱしそう来たか……。


「ボク男なんだけど」


 アルノが困惑したように言う。


「問題ない。この街じゃ男だって水商売ができる。それにその見た目なら男相手だって特定のマニアに需要がでるだろう」

「……そんなマニアを相手するのは嫌だな……」


 アルノが顔を歪ませながらいう。

 そりゃあマニア相手じゃなくたって普通は嫌なんだけども。

 でも男の娘っていうのが、特定の人に刺さるっていうのは、まあ、うん。そうでしょうね。


「だが100万フルだからな。それくらいのリスクは負ってもらわないと困る。どうする?」

「……ちょっとだけそこで待っていてもらえますか? 仲間と話しますので」

「わかった」


 少し離れ3人で話す。


「どうする?」

「悪くない。勝てばさっさとこの不快な街を離れられる」


 ああ、ノアちゃんもそう思ってたんすね。

 いつもに増して機嫌悪そうだったのはそのせいか。


「でもあんな風に言ってきたのは、それだけあっちがそのクロノスペクトルとかいうゲームに自信があるってことだと思うよ。負けたら3人合計でとはいえ100万稼ぐまでこの街で足止めくらうのは流石に痛くない?」


 やってみる、なんて簡単には言えない条件だ。


「…………負けることは考慮してなかった」


 この子は慎重なのか大胆なのかわからん……。


「とはいえ、このままここにいても同じ結末をたどる可能性は高いんじゃない……?」


 うん。それもそう。

 負け続けすっからかんになって、結局体売って資金集めなんてことになりかねない。


「…………わかった。やるか…………」


 私たちはその勝負を受けることにした。

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